ZEHってどんな住宅?基準やメリット・デメリットとポイント3つ
注文住宅について調べていると、ZEH(ゼッチ)という言葉を見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。しかし、何かよく分からないという人も多いと思います。今回は、これからの住宅のスタンダードとなるZEHについて詳しく解説します。ZEHを建てるメリット・デメリットとZEH基準の家づくりのポイントもご紹介します。
ZEHってどんな住宅?
まず、ZEHとはなにか、言葉の意味や政府の取り組み、ZEH基準にについて詳しく解説します。
・ZEH(ゼッチ)とは
厳しい基準をクリアした省エネ住宅を指します。ZEHは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を略した言葉です。一次エネルギー(電気に変換される前の石炭や天然ガスなど)の年間消費量が実質ゼロ以下になる住宅のことをいいます。しかし、ZEHならエネルギーを全く消費しない、というわけではありません。住宅の屋根や外壁などを高断熱・高気密にして、高効率な省エネ設備を備え、さらに太陽光発電でエネルギーを創り出すことによって、プラスマイナスゼロになるようにします。ZEHを満たすには、『断熱』『省エネ』『創エネ』の3つが揃っていなければなりません。ZEHは、夏は涼しく冬も暖かいという快適な環境を保ちながら、省エネが叶う住宅です。
・ZEHへの取り組み
近年、地球温暖化対策として、多くのエネルギーを消費する住宅を『ZEH』化していく取り組みが進められています。日本では、2014年の第4次エネルギー基本計画において、『2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す』と定めました。政府は補助金を出すなどしてZEHの普及を進めた結果、資源エネルギー庁によると、2020年のハウスメーカーが新築する注文戸建住宅のうち約56%がZEHとなりました。また、2050年カーボンニュートラル実現に向けても、住宅の省エネ化、省CO₂化が進められています。2030年度以降新築される住宅には、ZEH基準の性能が求められ、そのうち6割に太陽光発電設備を設置することが政策目標となっています。ZEHは、これからの住宅のスタンダードになっていくでしょう。
・ZEH基準とは
ZEHとして認められるためには、次のような4つの基準があります。
●外皮(屋根や外壁、窓など)の断熱性を高め、UA値が0.4〜0.6以下
●省エネ性能の高い設備を導入し、基準一次エネルギー消費量より20%以上削減
●再生可能エネルギー設備を導入(容量不問)
●再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量より100%以上削減
UA値は断熱性の高さを示す値です。寒冷地ではより高い断熱性能が求められ、より厳しい値になります。また、基準一次エネルギー消費量とは、一定の数値ではなく、住宅の建設地域区分や床面積などの条件、使用する設備機器の種類等によって値が変わり、専用のWebプログラムを利用して算出します。
ZEHを建てるメリット・デメリット
次に、ZEHのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
・ZEHのメリット
●光熱費を抑えられる
ZEHは高断熱・高気密住宅であるため、冷暖房効率が良く、光熱費が抑えられます。断熱性を高め、高効率な設備を使うことによってエネルギーの消費を抑えています。世界情勢の変化に伴い、石油や天然ガスの価格が高騰すると、電気料金も値上げされてしまいます。しかし、エネルギーの使用料を減らせれば、家計への影響も少なく済むでしょう。また、エネルギーを創り出す量が使用量を上回れば、黒字化させることも可能です。
●室温を一定に保ちやすい
ZEHは断熱性能が高い住宅のため、外気の影響を受けにくく、室温を一定に保ちやすいというメリットもあります。最小限の冷暖房によって、夏でも涼しく、冬も暖かく快適に過ごすことができます。結露やカビの発生も抑えられるでしょう。また、ZEHは家全体の温度差を小さくできるため、ヒートショック予防が期待できます。とくに高齢の方は、冬場に暖かいリビングから寒いお風呂場などに移動すると、急激な温度差によって血圧が上下し、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが高まります。家中の温度差が小さく一定に保たれてるZEHでは、快適で健康的に暮らせます。
●非常時でも安心
ZEHなら、台風や地震などの非常時でも、安心して過ごせます。太陽光発電によってエネルギーを創り出したり、蓄電池に貯めておいたりできるため、災害に伴う停電時などにも電気を使うことができます。太陽光発電システムを導入している場合、停電時には自立運転機能への切り替え操作を行うことで、電気が利用できます。
・ZEHのデメリット
●建築費用が高くなる
ZEHを建てるには、屋根や窓、外壁の断熱性を高めたり、省エネ設備や太陽光発電システムを導入したりする必要があるため、従来の住宅より建築費用が高くなってしまいます。ZEHでは、省エネ性能に優れた冷暖房設備やLED照明などを使うことによってランニングコストは安くできるものの、イニシャルコストは上がってしまいます。
●メンテナンス費用がかかる
ZEHに太陽光発電システムを導入した場合、定期的な清掃やメンテナンスが必要になり、費用もかかります。太陽光パネルや蓄電池は、屋外で風雨にさらされているため、保守やメンテナンスを怠ると、発電量の低下や故障を招いてしまいます。例えば、砂埃や鳥のフン、落ち葉などが長期間付着していると、発熱異常を起こす場合があります。また、パネルを取付けているボルトが緩んでいないか、部品が経年劣化していないかなども定期的に確認し、必要に応じて修理、交換をしなければなりません。
●天候や設置場所の影響を受けやすい
ZEHにおいて創エネに利用される太陽光発電は、天候や設置場所の影響を受けやすいことがデメリットです。太陽光発電は、曇りや雨の日は発電量が減ってしまいます。発電量は、日照時間や日差しの強さなどによって異なり、安定しません。また、同じ面積の太陽光パネルを設置していても、住む地域や屋根の向きなど、設置場所によって発電量に差が出てしまいます。
ZEH基準の家づくりのポイント3つ
最後に、ZEH基準の家づくりで知っておくべきポイントを3つ解説します。
・断熱性を高めるには窓が重要
ZEHには高断熱・高気密であることが求められます。窓は、住宅でもっとも外気の影響を受けやすい場所になります。住宅の断熱性を高めるには、窓への対策が重要です。開けたときに暖気や冷気が出入りするだけでなく、閉めた状態でも窓ガラスやサッシを通して熱が逃げてしまいます。熱の出入りを抑えるためには、窓ガラスとサッシへの対策が必要です。窓ガラスは、2重になったペアガラスや3重になったトリプルガラスがおすすめです。ガラスとガラスの間に特殊なガスを封入した空気の層があるため、熱が伝わりにくいという特徴があります。また窓枠についても、従来の金属製のサッシは熱が伝わりやすいため、夏は熱く、冬は冷たくなってしまいます。断熱性を高めたい場合には、樹脂製のサッシが適しています。ZEH基準の高断熱・高気密な住宅を建てるには、屋根や壁だけでなく窓への対策を忘れないようにしましょう。
・設備も省エネタイプを選ぶ
ZEHの実現には、設備に省エネタイプを選ぶことも大切です。住宅で使用する主なエネルギー設備には、冷暖房や給湯、換気、照明などがあります。なかでも、冷暖房と給湯で家庭の消費エネルギーの6割程度を占めるため、設備の選定が重要になります。例えば、エアコンを選ぶ際には、『統一省エネラベル』を見て省エネ性能の確認をして下さい。省エネラベリング制度では、省エネ基準達成率やエネルギー消費効率、年間電気料金などの情報を表示することが義務付けられています。部屋の広さに応じた製品を選ぶことも大切です。給湯設備については、従来のガス給湯器よりも、エコキュートと呼ばれる給湯器を採用した方が、わずかな電気で高効率にお湯を沸かせます。エコキュートは正式名称を『自然冷媒ヒートポンプ給湯機』といい、空気の熱を利用してお湯を作る設備です。また、照明にはLEDを選ぶなど、それぞれの設備に省エネタイプを選ぶことで、住宅全体の消費エネルギーを抑えられます。
・快適さにもこだわる
家づくりでは、断熱や省エネの性能だけでなく、住み心地や快適性にもこだわりましょう。ZEHや省エネ住宅にはメリットがたくさんありますが、ZEH基準を満たせば必ず快適な住宅になるというわけではありません。例えば、家の断熱性を高めるには、窓は数が少なく、サイズも小さい方が良いと言えます。『マイホームは、窓がたくさんある明るい家にしたい』という夢を描いていた人にとっては、真逆と言えるでしょう。窓を少なく、小さくすると、断熱性や気密性が上がるのは事実です。しかし、採光性が悪くなったり、換気がしにくかったり、部屋が狭く感じたりという場合もあります。ZEH基準を満たすことにこだわるあまり、住み心地や快適性を考慮しないと、後悔につながってしまいます。リビングの窓はバルコニーとつながる大きなサイズにして開放感を出し、一方でほかの場所は小さくするなど、バランスを取ることが大切です。
まとめ
今回は、ZEHとはどのような住宅なのかご紹介し、メリット・デメリットやZEH基準の家づくりのポイントを解説しました。ZEHとは、厳しい基準をクリアした省エネ住宅のことで、『断熱』『省エネ』『創エネ』の3つの要素が必要です。光熱費が抑えられたり、室温を一定に保てて快適だったりというメリットがあります。ZEHに欠かせない断熱性を高めるには、窓への対策が重要です。設備も1つ1つ省エネタイプを選ぶようにしましょう。また、家づくりでは、省エネ性能だけでなく、住み心地や快適性にもこだわることが大切です。