家を買う・建てるときハザードマップは見るべき?種類と使い方

ハザードマップという言葉は聞いたことがあっても、実際見たり、気にしたりしたことがないという人は多いと思います。実は、色々な種類があり、その土地で安心して暮らすために知っておくべき情報が記されています。今回は、家を買うときや建てるときに役立つハザードマップの種類と使い方について解説します。リスクも知った上で、納得した土地選びや家づくりをしましょう。

ハザードマップとは?

そもそもハザードマップとはどんな地図なのでしょうか。家を買う・建てるときに見るべきか、浸水想定区域等に入っていたら家を建てない方が良いかなど、詳しく解説します。

・ハザードマップってなに?

身の周りで起きるかもしれない自然災害のリスクや避難場所、避難経路などを記した地図です。自然災害によって、マップも種類が分かれています。その土地の成り立ちや地形、地盤の特徴、過去の災害履歴などをもとに被害を予測し、各自治体によって作成されます。万が一災害が起きた場合に、どこに避難すべきか、二次災害発生予想箇所に当たらないかの判断などに活用できます。日本では1990年代から作成が進められてきました。自然災害の被害を予測して作成されることから、被害が想定を上回ってしまう場合もあり、何度も改訂が行われています。

・ハザードマップは家を買う・建てるときに見るべき?

家を買うときや建てるとき、ハザードマップは見ておくべきだと言えます。万が一のとき、自分や家族の安全を確保するための情報が記されています。マップでは、被害が予想される地域に色が付けられています。しかし、色が付いているからとむやみに怖がるのではなく、どの程度のリスクなのか、冷静に判断する材料にして下さい。身の周りで起きるかもしれない災害のリスクを知って、対策したり備えたりしておくことが大切です。

・浸水想定区域等に入っていたら家を建てない方がいい?

もし気に入った土地が浸水想定区域等に入っていたら、家を買ったり、建てたりしない方がいいのでしょうか。実は、多くの土地が区域内に該当しているため、一概にやめた方がいいとは言い切れません。ハザードマップを実際に見ると、浸水想定区域がたくさんあることに驚く人は多いでしょう。例えば、東京の東部低地帯に位置している江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)には、大規模水害によって浸水の可能性がある区域に、約250万人が居住しています。浸水想定区域は、想定最大規模(1000年に1回程度発生する規模)の降雨による河川や下水道の氾濫、海面の上昇を前提に指定されています。河川や海の近くの家は、リスクがある反面、景観や日当たりの良さなどのメリットもあります。メリット・デメリットをしっかり理解した上で、検討することが重要です。

ハザードマップの種類

自然災害には水害や土砂災害、地震、火山の噴火などがあり、8種類のハザードマップが作成されています。水害と一口に言っても、浸水発生の原因は、洪水、内水、高潮などがあるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。

●洪水ハザードマップ

洪水とは、大雨や台風などによる河川の氾濫や堤防の決壊が生じ、市街地に水が流れ込んでしまうことをいいます。外水氾濫と呼ばれる場合もあります。洪水ハザードマップは、外水氾濫によって浸水が予想される区域や深さ、浸水時間に加え、避難経路や場所などが地図上に記されています。国土交通省または都道府県から提供された洪水浸水想定区域図をもとに、水防法に基づいて自治体が作成し、各世帯に配布したり、ホームページに掲載したりしています。近隣に大きな河川がない場合など、洪水浸水想定区域が指定されていない地域では作成していない場合もあります。

●内水(ないすい)ハザードマップ

大雨などで排水機能が追い付かないことや河川の逆流により、市街地の側溝や下水道のマンホールから水が溢れることを内水氾濫と呼びます。内水ハザードマップは、内水氾濫による浸水が想定される区域や浸水の深さなどの情報を記した地図です。近くに河川のない地域や都会でも起こり得る水害のため、多くの場所が浸水予想区域に該当しています。周りの土地より低い場所や、急に人口が増えた地域などは、集中豪雨などの際に排水が間に合わないことがあるため、注意が必要です。過去に内水氾濫が発生した地域や予想される地域では、自治体が土のうを準備している場合もあります。

●高潮(たかしお)ハザードマップ

高潮とは、台風など強い低気圧によって波が高くなり、同時に海面の水位が上昇する現象を指します。地震が原因で起きる津波とは異なります。高潮ハザードマップは、高潮によって浸水が想定される区域や水深、浸水継続時間などを示した地図です。一度浸水が生じると、低地での浸水被害は急速に広まります。主に沿岸地域や、川沿いの地域は注意が必要です。

●津波ハザードマップ

津波とは、大規模な地震によって生じる、破壊力が大きくて危険な大波が沿岸に押し寄せる現象のことです。津波ハザードマップは、都道府県知事が指定した津波災害警戒区域をもとに、浸水範囲や深さなどを記しています。地域の住民が危険な区域から迅速に避難できるよう、避難場所や注意点などが書かれている場合もあります。

●土砂災害ハザードマップ

がけ崩れや土石流、地すべりなどの土砂災害が想定される、土砂災害(特別)警戒区域を記した地図です。山間部だけでなく、都市部でも付近に急傾斜地がある場合には、指定されていることがあります。例えば、東京都内でも令和6年3月現在、土砂災害警戒区域は約15,600箇所も指定されています。

●ため池ハザードマップ

ため池の堤体が決壊した場合、最大でどの程度の浸水の範囲や深さになるかを記した地図です。ため池は、地震による損傷や、貯水能力を上回る雨水の流入などによって氾濫する可能性があります。どのくらいの地震(震度)や大雨になれば危ないという明確な判断基準がないため、避難のタイミングは難しいと言えます。

●火山ハザードマップ

噴火のパターンや過去の噴火歴をもとに、噴火による危険が予想される範囲や避難場所などの情報を記した地図です。付近に活火山のある自治体が作成し、公表しています。

●地震ハザードマップ

地震による揺れやすさや、家屋倒壊の危険度、液状化の危険度などを表した地図です。それぞれの自治体により、想定している地震やマグニチュードが異なります。例えば東京都文京区では、都心南部直下地震を想定してマップを作成しています。また、愛知県名古屋市では、南海トラフ地震の被害想定をもとにマップを作成しています。

家を買う・建てるときのハザードマップの使い方

最後にハザードマップの使い方について、土地選びや家づくりでどのように活かせば良いか解説します。

・『重ねるハザードマップ』を利用する

家探しや土地選びの際、様々なリスクについて一度に確認したい場合には、国土交通省のポータルサイトにある『重ねるハザードマップ』が便利です。洪水や土砂災害、高潮、津波のリスク情報に加え、道路防災情報や土地の特徴・成り立ちなどを地図に重ねて表示できます。近年、台風や大雨による大規模な水害が日本各地で増加しており、家を買う・建てるときに気になる人は多いでしょう。2020年8月以降、不動産取引の際に行われる重要事項説明では、水害ハザードマップにおける物件所在地の説明が義務付けられました。また、土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域などに該当していないかも明記されます。『重ねるハザードマップ』では、自然災害のリスクを簡単に確認できるため、家探しや土地選びの際に見ておくと良いでしょう。より詳しい情報を確認したい場合は、自治体のホームページを見たり、問い合わせたりして下さい。

*国土交通省https://disaportal.gsi.go.jp/index.html

・家づくりでリスクに応じた対策を講じる

ハザードマップで土地のリスクを理解したら、家づくりで対策を講じるようにしましょう。例えば、気に入った土地が浸水想定区域に入っている場合は、浸水が予想される深さを確認して下さい。一般的に、家の1階部分の高さは約3mです。予想される浸水の深さが3m以下の場合は、例えば1階は駐車場にして、キッチンなどの主な生活スペースを2階以上に配置するなどの対策が可能です。また、基礎部分を高くして、1階の床面を高くする方法も有効です。1階部分の外壁を鉄筋コンクリート造にしたり、防水性の高い塀で建物を覆ったりという方法もあります。想定される浸水の深さなどに応じて、対策を検討しましょう。

まとめ

今回は、ハザードマップの種類と使い方について解説しました。ハザードマップは、身の周りで起きるかもしれない自然災害のリスクや避難場所、避難経路などを記した地図です。自然災害別に8種類あり、自治体のホームページなどに掲載されています。また、国土交通省が取りまとめる『重ねるハザードマップ』は、洪水や土砂災害などの被害想定を重ねて表示できるのでおすすめです。家を買うときや建てるときはハザードマップを見る良い機会となります。正しくリスクを知った上で、納得した土地選びや家づくりをして下さい。