和の香りが魅せる癒しの空間 和室で楽しむアロマ

日本の伝統的な部屋の一つでもある和室。畳があるととても落ち着くという方少なくないでしょう。家族や友人と畳に座り会話や食事を楽しんだり、畳の上でくつろぎ、まったりとする時間に幸せを感じる方も多いと思います。また和室に布団を敷いてじゃないとゆっくり眠ることが出来ないという方もいらっしゃいますね。リビングになったり、ダイニングになったり、寝室や客間にもなる凡庸性の高さが和室の魅力でもあります。日本人だけじゃなく、外国の方にも和室は「日本の風情が感じられる」と人気なのは、日本文化や伝統を体験する場所として存在しているからだと思います。

さて、マイホームやマンションを購入するとき、和室があるかないかで悩む人多いのではないでしょうか? 昔は和室があることが当然!でしたが、ライフスタイルが多様化している今、必ずしも和室が必要という家庭は少なくなっています。和室だからこそ楽しめるアロマ、和室がなくても“和”を感じられるアロマを今回はご紹介します。

和の香りの魅力

あなたは「和の香り」と聞いて、どんな香りが浮かびますか?柚子、檜、味噌、醤油、和紙、イグサ・・・など色々と思い浮かんできます。和の香りは、日本の四季の美しさと季節の移ろいを感じることができます。例えば、桜の花の香りは春、檜の香りは冬を連想させますよね。日々に追われている忙しい毎日の中、季節を感じさせる和の香りを部屋に広げてみるのもおすすめです。

また、和の香りには日本の伝統的な文化や風景を思い起こさせ、自然との調和も感じさせてくれるのでリラックスや心地よい癒しをもたらす効果があります。そして、和の香りは、茶道や生け花、仏教の儀式など、日本の伝統的な文化とも結びついています。

茶道の席などでその場を浄めるためのお香を焚く習わしがあります。子供の頃、祖母のお茶室で見た真っ黒な丸い香り玉(練香)とその香りが今このコラムを書きながら記憶に蘇ってきました。香りと記憶の結びつきは何年経っても変わらず色あせないものです。 お花を生ける時も、例えばロウバイや水仙のような花の香りだったり、ご仏壇での線香の香りだったり、和の香りは私たちの生活の中でたくさん感じることができますし、それがいつしか記憶にインプットされているのです。そして何かのきっかけで記憶を甦らせ、様々な感情に導いてくれます。香りは過去と未来をつなぐ素晴らしいものでもあるのです。

日本の伝統的な香りを和精油で楽しむ

和の香り、例えば金木犀の香りや柚子の香りに包まれると、心や身体が緩んで、どこか懐かしい気分に浸れるってことありませんか? 実は、アロマが生活の中に取り入れられるようになって、ここ数年で「和精油」も注目され始めています。和精油は、日本で育った植物から抽出されるアロマ精油で、日本生まれの香りだから日本人の感性にとてもマッチするものが多いのです。日本の大地で育つ植物から抽出されるので、純国産という安心感もありますし、子供の頃に記憶している香りは、懐かしさをも心地よさに変えてくれます。

ラベンダーやゼラニウムやローズマリーの香りは西洋発のものなので、最初なかなか馴染めない。という方もいらっしゃるかもしれません。ですが、柚子や檜や金木犀の香りは日本人の暮らしの中にあり、身近なものなので馴染みも深いもの。 では、どんな種類があるのか代表的なものをご紹介しましょう。

【檜】

檜は建築材料や香木として広く使用されています。この香りは森林浴をしているような気分に浸れ、清新で穏やかです。リラックスや静けさをもたらすとされており、和室で寛ぐ時におすすめです。

【柚子】

柚子の香りはとても爽やかです。柑橘系の香りでありながら、他の柑橘類とは異なっており、より鮮やかで洗練された印象を与えます。冬の鍋料理や和食にも使われるので日本人には馴染みがあり人気の香りです。不安感や緊張感を和らげ、ストレス軽減、また気分をリフレッシュさせるのに役立ちます。和を感じる空間を作り出すこともできますので和室で使ってみてはいかがでしょうか?

【トドマツ】

北海道を代表する樹木のトドマツは、厳しい冬の間も葉を青々と茂らせています。そこから非常に強い生命力の象徴とされてきました。北海道の自然の中で綺麗な空気を吸い込んだような清々しい香りです。透明感のある凛とした香りは、精神疲労時におすすめ。気分をリフレッシュさせ元気にしてくれます。また空気の浄化や消臭にも役立ちます。和室を香りで満たして深呼吸してみるのもいいかもしれません。

【月桃】

沖縄を代表するハーブの月桃は、花の蕾が桃のように見えるためこの名前が付いたと言われています。甘く、微かにスパイシーな香りで温かさや爽やかさを兼ね備えておりとても特徴的です。不安感や緊張感、迷いを解き放ち、安眠効果も期待できます。

静かな夜を過ごしたいと思ったら、月桃の香りを和室に広げるのもおすすめです。

【和薄荷】

和製薄荷は、ペパーミントやスペアミントに比べて、メントール成分を多く含みます。そのため、力強くくっきりとした清涼感や爽快感が特徴です。ジメジメした季節や花粉が気になる季節、また集中力を高めたい時や気分転換をしたい時に使えるアロマです。

【杉】

杉は日本に生息する固有種で、北海道から屋久島まで広く分布しています。古くから醤油や日本酒を杉樽で仕込んでいました。高級感のあるウッディーな香りは香り付にも使われており、日本人にはとても馴染み深い樹木です。森林の中にいるような清々しいのも魅力で、疲労回復やリラックスに効果的です。抗菌・防虫作用もあるのでハウスキーピングにも向いています。

【ヒバ】

ヒバは檜に似た爽快感のある樹木系の香りです。針葉樹特有のシャープな芳香は、森林浴を思わせ浄化作用、鎮静作用が期待できます。強力な抗菌性をもつ成分「ヒノキリオール」をふんだんに含み、抜群の抗菌効果を発揮します。また、高ぶった感情をしずめ、精神の安定をもたらしてくれます。

その他、それぞれの都道府県の産物から和精油は次々と作られています。

甘夏、伊予柑、ボンカン、夏みかん、スダチ、クスノキ、北海道モミなど。 地方へ旅行に行った際、その土地に根ざした和精油を見つけてみるのも面白いかもしれませんね。

四季を感じるための香り

日本には、春夏秋冬と季節の移ろいがあります。季節感を和精油を使って演出するのもアロマテラピーの醍醐味でもあります。季節ごとにどのような香りがおすすめなのかご紹介します。

【春の香り】

春には、桜や沈丁花など様々なお花が咲き始めます。

爽やかで華やかな、春の到来を感じさせるような香りを使ってみてはいかがでしょうか? 心や身体が軽やかになるような・・・月桃やビターオレンジの花(ネロリ)、ローズ系の香りもおすすめです。

【夏の香り】

夏の季節感を演出するには、柑橘系や薄荷のようなスッとする香りを選びましょう。

例えば、柚子やカボス、夏みかん、伊予柑や甘夏といった柑橘系の和精油は和室を明るく爽やかな空間に変えてくれます。和薄荷を使うと、清涼感もでますので暑い夏には涼しさを感じることができますよ。

【秋の香り】

秋は夜が少しずつ長くなり、センチメンタルな気分になってしまう季節でもあります。と同時に気候も過ごしやすくなり、いろんな事に打ち込める時です。紅葉などの秋の風景を思い起こすような香りを使ってみてはいかがでしょうか?

落ち着きのある甘さが特徴的なクロモジや樟脳のようなシャープな香りを持つクスノキの和精油もいいですし、肌寒くなった頃どこからともなく香ってくる金木犀の甘い香り。和室で月を眺めながら金木犀の香りに包まれお酒や美味しいお茶をいただくのも家族団欒を過ごすひと時になるのではないでしょうか?金木犀の精油も最近大人気です。

【冬の香り】

冬は温かさや穏やかさをもたらし、冬の静寂さを感じさせるような香りがおすすめです。檜や杉、松やモミの木といった樹木系の香り。また冬の料理にもしばし使われるシナモン、しょうが、ナツメグ、クローブといったスパイス系の精油は、心や身体を温める効果もあります。寒い季節でも香りを使って優しい気分に浸れるといいですね。  精油を使用する際には、アロマディフューザーやアロマランプなど香りを広げるための機材を活用しましょう。精油は肌に直接塗布しないように注意してください。

まとめ

和の(和精油)の奥深い香りは、私たち日本の美しい文化と自然との調和を感じさせてくれます。四季折々の表情や伝統的な価値観が、和精油の香りに宿り、私たちの生活をより豊かにし、一度体験すると忘れられないものになるのではないでしょうか?和室でも楽しめるアロマテラピー、また和室がなくても「和」の空間を楽しむことは、日本の文化と自然を肌で感じることができる尊いものだと思います。私たちの心と身体に潤いと平穏をもたらす時間を和精油とともに過ごしてみてください。

プロフィール

【荒石由紀恵】

中央大学を卒業後、山口放送に入社し、局アナウンサーとして勤務する。 T V番組内でアロマテラピーを取材したのをきっかけに学び始める。退社後、アロマが盛んなオーストラリアへ留学。生活の中で身近に使われるアロマに触れその魅力にはまり、帰国後に認定資格を取得する。1999年よりアロマ講師として活動を開始し2004年には、「心と身体の真の癒し」をコンセプトにした専門店「AROMADROPS」をオープン。介護施設でのアロマケア、クリニックでの産後ケアにも携わりセラピストとしても活動している。アロマテラピーの可能性を広げるため多方面で香りと他業種のコラボレーションを仕掛けている。

◇ アロマドロップス http://aromadrops.net/