オール電化のメリット・デメリット、ガス併用とどっちがおすすめ?

オール電化は、現代的で省エネという印象があり、導入を迷っている人も多いでしょう。高断熱・高気密住宅の人気が高まるなか、室内で燃焼ガスを発生させないオール電化は、クリーンで安全性が高いことから注目されています。しかし、メリットだけでなく、デメリットも知った上で選ぶことが大切です。今回は、オール電化とは何かをご紹介し、メリット・デメリットやガス併用とどっちがおすすめかを解説します。

オール電化とは?基礎知識と主な設備

まず、オール電化とは何か、主にどんな設備が必要かという基礎知識をご紹介します。

・オール電化とは

家庭で使うエネルギーをすべて電気でまかなうことです。主に調理、空調、給湯、照明の熱源に電気を使用します。ガスや石油を使わないことで、室内の二酸化炭素の排出を抑えられます。不完全燃焼やガス漏れのリスクも軽減でき、安全性が高いことが魅力です。

・オール電化住宅の主な設備

オール電化住宅では、どのような設備や電気機器が必要なのでしょうか。

●IHクッキングヒーター

オール電化住宅では、ガスコンロではなく、IHクッキングヒーター(電磁調理器)を使用します。IHクッキングヒーターは、内部のコイルを流れる電流により、専用の調理器具を自己発熱させます。ご家族で暮らす住宅では、通常200Vの電源が必要です。弱火から強火まで火力調整の幅が広く、揚げ物なども十分な火力で調理できます。長時間煮込む際に便利な、タイマー機能が付いている製品もあります。天板が平らで、お手入れが簡単なことも大きな魅力でしょう。ガスや火を使わないので、火事やヤケドのリスクが軽減できることから、お子さんや高齢の方のいるご家庭に人気です。しかし、火は使わなくても調理後の天板はしばらく高温になっているため、注意が必要です。また、製品によっては調理の際の加熱ムラが気になったり、チャーハンなどのあおり調理に向かなかったりというデメリットもあります。

●給湯器

オール電化住宅では、ガス湯沸かし器の代わりに、『エコキュート』や電気温水器を使用します。エコキュートの正式名称は『自然冷媒ヒートポンプ給湯器』で、エコキュートは愛称です。ヒートポンプ技術を使って、空気中の熱を利用してお湯を作ります。作ったお湯は、キッチンやお風呂、床暖房などに使います。お湯を作るヒートポンプユニットと、お湯を貯めておく貯湯ユニットの2つの装置で成り立っています。エコキュート給湯器は、電気料金の安い夜間にお湯を作って貯めておき、それを日中に使います。人が寝ている深夜に稼働するため、設置場所には注意が必要です。寝室や隣家に近いなど、騒音が気になる場所には据え付けないように、メーカーのカタログにも記載されています。

●エアコン・床暖房

オール電化住宅では、冷暖房にはエアコンと床暖房を使います。電気を使う床暖房は、電気ヒーター式と温水循環式の2種類で、オール電化住宅と相性が良いのは温水循環式です。熱源に多機能型エコキュートを使うタイプと、ヒートポンプを使うタイプに分かれます。エコキュートの床暖房では、夜間に貯めたお湯を床下のパイプに通し、空間を温めます。ランニングコストが安く、環境にも優しくて安全です。一方で、イニシャルコストが高いこと、お湯が不足する恐れがあることはデメリットです。また、床暖房パネル自体は寿命が長いものの、エコキュート本体の寿命は10~15年と言われています。将来的にメンテンナンスや交換費用が発生することを考慮しなければなりません。

オール電化のメリット・デメリット

次に、オール電化のメリット・デメリットをそれぞれ詳しく解説します。

・オール電化のメリット

●光熱費が抑えられる

オール電化住宅では、ガスを使用しないため、電気代がそのまま光熱費になります。多くの電力会社は、オール電化向けの料金プランをもちます。一般的な料金プランとの違いは、時間帯によって単価が異なる点です。オール電化住宅ではエコキュートや電気温水器など、夜間蓄熱式機器を使うため、昼間より夜間の電気代が安く設定されています。安い時間帯の電気の活用により、光熱費が抑えられます。また、ガスを使わないため、光熱費の支払い先が1カ所になり、家計管理がしやすいことも魅力です。

●火を使わないので安心

オール電化住宅では、火を使わずに料理や暖房ができます。お子さんや高齢のご家族、ペットがいる場合でも安心です。ガス漏れや石油漏れ、不完全燃焼による一酸化炭素中毒の心配もありません。

●オール電化住宅割引が使える火災保険もある

火災保険のなかには、オール電化住宅割引が使える商品もあります。火を使わないことで、火災のリスクが軽減されるためです。火災の危険が少ないのなら、『オール電化住宅では火災保険は必要ない?』と考える方もいるかもしれません。しかし、コンセントや電化製品からの出火や放火、もらい火、自然災害による損害などの可能性があり、火災保険は必要になります。せっかくオール電化住宅にするなら、割引制度の利用がお得です。

●夏場の料理も快適

暑い日に素麺で涼しくなろうと思ったのに、茹でたら余計暑くなってしまったという経験はありませんか。火を使わないIHなら、コンロ周りが熱くなりにくいため、夏場の料理も快適です。調理中に近くで扇風機を使ったり、窓を開けて自然の風を入れたりしても、火は立ち消えしません。

・オール電化のデメリット

●イニシャルコストが高い

オール電化の導入には、エコキュートやIHクッキングヒーターなど、専用の機器や工事費用が多くかかり、ガス併用よりもイニシャルコストが高くなります。IHとエコキュートの導入だけでも50~100万円程度はかかり、床暖房や太陽光発電、蓄電池など、設備を増やせばその分の費用がアップします。

●IHでは調理しにくいメニューがある

ガスコンロを使い慣れていると、IHでの調理に戸惑う人もいるでしょう。IHは、接している鍋底部分だけを加熱します。チャーハンなど、あおり炒めをするメニューには向いていません。均一に火を通すことが難しいため、水っぽい仕上がりになる場合があります。また、IHでは、ガスコンロに比べて鍋の中にできる対流が小さく、調理中は煮えムラや焦げつきがないように、頻繁にかき混ぜなければなりません。一方、IHの方が温める速度が速く、細かい火加減の調整が可能です。煮込み料理や揚げ物には向いています。

●電気代高騰の影響が大きい

オール電化のエネルギー源は電力だけなので、電気代の高騰は、ダイレクトに家計に影響します。近年、電気代の値上げが続き、オール電化で利用している夜間の料金も値上げされています。電気代を抑える工夫としては、最新の省エネ家電を使ったり、世帯人数やライフスタイルにあったプランを選んだりといった方法があります。

●停電になると電化製品が使えない

オール電化では、停電になると電化製品全てが使用できなくなります。ガス併用なら、停電時でも調理や給湯ができるため、オール電化の方が不便に感じるでしょう。あらかじめカセットコンロを準備したり、太陽光発電と蓄電池をセットで揃えたりなど、災害時に備えておくことが大切です。また、エコキュートや電気温水器のタンクに沸かしたお湯が残っていれば、停電時でもシャワーなどに使えます。

オール電化とガス併用、どっちがおすすめ?

オール電化とガス併用には、それぞれメリット・デメリットがあり、向いていない方を選んでしまうと後悔に繋がります。最後に、それぞれどんな人におすすめかを解説します。

・オール電化がおすすめの人とは

●火事のリスクを軽減したい

オール電化住宅の最大の特徴は、火を使わないことです。家庭で必要なエネルギーを全て電気でまかなうため、ガスコンロの消し忘れやガス漏れといった、火事のリスクが軽減できます。安心安全を優先したい人には、オール電化が向いています。

●昼間はあまり家にいない

共働き家庭など、『昼間はあまり家におらず、主に電気を使うのは夜間』というご家庭では、オール電化がおすすめです。各電力会社では、夜間の電気料金を安くしたオール電化向けの料金プランがあります。ライフスタイルに合ったプランを選ぶことで、光熱費のランニングコストが抑えられます。

●お手入れがラクな方がいい

コンロのお手入れのしやすさでは、IHの方がガスコンロより圧倒的にラクです。天板が平らなので、料理後はさっと拭けば終わりです。とくにアイランドキッチンなど、リビングから見えるコンロなら、きれいに保ちやすいことはメリットになります。

●太陽光発電と蓄電池の導入も考えている

太陽光発電と蓄電池の導入も検討していて、電気代をゼロに近づけたいと考えている人にもおすすめです。オール電化と太陽光発電、蓄電池を組み合わせることで、光熱費の節約になるだけでなく、災害時の停電対策にも有効です。余った電気を電力会社に売ることで、設備費用の回収にもつながります。

・ガス併用がおすすめの人とは

●イニシャルコストをなるべく安くしたい

イニシャルコストが安いのはガス併用です。ガス併用の場合の初期費用相場は30~50万円、オール電化では50~100万円、設備内容によってはそれ以上とも言われています。また、設備には、将来的にメンテナンスや交換費用も必要になるため、トータルで検討しておきましょう。

●停電時のリスクを軽減したい

震災時の計画停電などの経験があると、リスク軽減のためにガス併用を選ぶ人が多いのではないでしょうか。オール電化の場合、停電時には全ての電気機器が利用できません。エネルギー源の一本化は、便利な反面、非常時にはリスクになります。

●日中の在宅時間が長い

ガス併用の家庭では、電気を使った分だけ料金が高くなる従量電灯契約にしていることが多く、時間を気にせず使用できます。一方、オール電化向けの電気料金プランでは、夜間が安い反面、昼間の料金が割高です。昼間の在宅時間が長く、日中も電気やお湯を使う生活の場合は、オール電化の光熱費の方が高くなる場合もあります。どんなプランでも電気の節約は必要ですが、ライフスタイルに合ったものを選ぶとストレスになりません。

●料理が好き

料理好きな人には、ガスコンロの方が調理器具を選ばずに使えておすすめです。IHでは、底が丸い中華鍋や土鍋、軽いアルミ鍋などは使用できません。また、中華料理やチャーハンを作る際などに、火力を強めてあおり炒めができるのはガスコンロだけです。IHでフライパンを振ってあおり炒めをすると、通電できないだけでなく、天板を傷つけてしまいます。

まとめ

今回は、オール電化の基礎知識や設備をご紹介し、メリット・デメリットやガス併用とどっちがおすすめかを解説しました。オール電化には、クリーンで安心な反面、初期費用が高かったり、停電時にリスクがあったり、電気代の高騰がダイレクトに影響したりというデメリットもあります。オール電化とガス併用のどちらがおすすめかは、それぞれの家庭によって異なります。またコストについては、イニシャルコスト、ランニングコストだけでなく、将来的にメンテナンスや交換にかかる費用も考慮して選ぶことが大切です。