気密性の高い家のメリットと注意点、高気密住宅にする方法も解説

住宅の気密性は、快適な暮らしに欠かせない、重要な性能の1つです。家づくりでは、かっこいい外観や、おしゃれな内装にこだわりたくなります。しかし、目には見えなくても、性能は住みやすさに直結し、とても大切です。高気密・高断熱の家は、外気の影響を受けにくく、一年を通して快適に過ごせると言われています。今回は、とくに『気密性』に着目し、高気密のメリットや注意点をご紹介し、高気密住宅をつくる方法についても解説します。

気密性とは?高気密住宅のメリット6つ

・気密性とは

住宅の気密性とは、『すき間を減らし、空気の出入りを少なくできているか』を示す性能です。気密性の高い家は、すき間が少ない家のことです。冬の寒い時期でも、室内の暖かい空気が外に逃げず、外部の冷たい空気が入りづらいため、快適に過ごせます。また、夏の暑い時期も、エアコンが効きやすく、省エネで、快適な空間になります。

・気密性の基準と数値

気密性の基準は、C値という数値で表されます。家の面積に対して、換気扇などの計画された通気口を除き、どれくらいのすき間があるのかを表します。数値が小さいほど、気密性が高いと言えます。C値は実測できる数値です。以前は国で定めた基準がありました。当時は、寒冷地の北海道などで2.0以下、その他の地域で5.0以下とされ、これよりも小さい数値が、高気密住宅でした。しかし省エネ法改正後の現在は、基準値が設定されていません。高気密をうたっているハウスメーカーでは、独自の基準を設けたり、測定値を公表したりして、気密性の良さを表しています。現在では、寒冷地以外でも2.0以下を目指すメーカーが多いようです。

・高気密住宅のメリット6つ

高気密住宅のメリットを6つご紹介します。

●断熱性能が高まる

気密性と断熱性は、快適な空間をつくる上で、どちらも大切な役割を果たします。どちらか一方では、効果が半減し、両方備わっていると、効果が高まります。断熱性能を表す数値には、UA値やQ値があります。数値が大きい方が、断熱性能が高いと言えます。高断熱の家は、外気温の影響を受けにくく、一年を通して、快適な空間をつくることができます。しかし、断熱性が高くても、すき間が多く、気密性が低いと、室温が変ってしまいます。気密性を高めると、断熱性能も高まり、快適な室温が保てます。

●省エネで経済的

気密性が低いと、すき間から外気が侵入し、冷暖房の効きが悪くなります。なかなか冷暖房の効果が得られず、余計な電気代や、燃料費を払うことになってしまいます。省エネルギーという観点からも、望ましくありません。気密性が高まれば、外気は侵入しづらく、室内の空気も漏れにくいため、省エネで経済的です。

●花粉などの侵入も防げる

すき間が多い住宅は、外気だけでなく、花粉や黄砂、PM2.5などの有害物質も侵入してきます。『気密性の高い家にしたら、花粉症の症状が緩和された』、という声もあります。玄関からの有害物質の侵入には、空気清浄機を置くなどの対処ができます。しかし、気密性が低い家は、すき間がどこにあるか分からず、対処のしようがありません。高気密住宅は、アレルギーを持つ方にとっても、優しい家だと言えるでしょう。

●換気性能が高まる

一見、すき間が多い方が、換気がしやすいと思うかもしれません。実は、気密性が悪いと、しっかりと換気ができません。2003年以降に新築された建物には、24時間換気が義務付けられています。シックハウス症候群の予防などが理由です。しかし、住宅にすき間が多いと、換気扇近くから外気を取り込んでしまい、ショートサーキット現象が起きます。一部の空気しか入れ替えできておらず、ムラができます。気密性を高めると、室内の空気を循環させることができ、換気性能が高まります。室内の湿気や臭い、有害物質などの排出も可能になります。

●防音性が上がる

気密性の高い家は、遮音性、防音性も上がります。交通量の多い場所や、繁華街の近くにお住まいの場合も、音が気になりにくいでしょう。台風などの際も、風雨の音が軽減され、不安にならずに済む、という声もあります。また、内部の音が外に漏れる心配も軽減できます。騒音トラブルが予防でき、お子さんやペットがいらっしゃるご家庭も、安心して、楽しいおうち時間が過ごせます。

●ヒートショックのリスクが軽減する

高気密の家は、リビングなどのお部屋以外でも、温度を一定に保ちやすくなります。たとえば、お風呂や廊下、トイレといった場所も、室内との温度差が小さく、ヒートショックのリスクが軽減されます。ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い場所に移動する際など、急激な温度変化によって起こる症状です。重度になると、呼吸困難や死亡例もあり、とても危険です。とくに高齢の方や、動脈硬化、生活習慣病などの持病のある方に起こりやすいと言われています。高気密住宅にして、少しでもリスクが軽減できれば安心ですね。

高気密住宅で気をつけるべき注意点

メリットの多い高気密住宅ですが、いくつか気をつけるべき注意点もあります。高気密のデメリットも理解して、効果的に導入しましょう。

・結露やカビに注意

高気密住宅は、すき間が少なく、外気が侵入しにくい家です。断熱性や防音性は高まる一方で、空気の循環がされにくい、というデメリットがあります。空気が循環されないと、湿気や、臭い、汚れた空気も、室内に滞留します。室内に湿気がこもると、結露やカビの原因になります。カビは、健康被害を引き起こすリスクもあり、注意が必要です。高気密住宅では、24時自動換気システムを、しっかりと稼働させましょう。

・暖房器具に制限がある

気密性の高い家では、石油ストーブや、内部燃焼タイプのファンヒーターは、使用が推奨されていません。石油ストーブやファンヒーターは、安価で暖房力が強く、根強い人気があります。しかし、不完全燃焼による一酸化炭素中毒のリスクがあり、十分な換気が必要とされます。昔ながらの家でも、1時間に1回程度は、窓を開けて換気しなければなりません。高気密住宅では、さらに多くの回数が必要となり、現実的ではありません。高気密・高断熱の家は、エアコンや床暖房で、十分冷暖房効果が得られます。暖房器具に制限があっても、困ることはほとんどないでしょう。

・ドアや窓の開閉が重くなりやすい

気密性の高い家では、ドアや窓を開けるとき、重く感じる場合があります。これは、室内外の気圧差が原因です。室内は、換気システムによって、給気に比べて排気量が多くなり、負圧になりがちです。室内が負圧になると、外から窓やドアを押し付ける力が強くなり、開けるときに重く感じる場合があります。室内外の気圧のバランスを整えるには、十分な給気が必要です。寒さや暑さの侵入を防ごうと、給気口を塞ぐことはやめましょう。また、給気口にフィルターを付けている場合、ほこりや排気ガスによって目詰まりすることもあります。時々チェックするようにして下さい。

高気密住宅をつくる方法

最後に、高気密住宅をつくる方法を解説します。家づくりの際に、どのような点に気をつければ良いのか、参考にしてください。

・断熱と換気もセットで導入する

高気密にする場合、断熱性能と換気性能は、セットで考えましょう。3つの性能は三位一体で、全て揃うことで、それぞれの効果が発揮できます。高断熱・高気密の家では、換気システムも同時に導入しないと、空気が循環されません。人が生活していると、二酸化炭素を生み出し、家具や建材からも、目には見えない揮発性の有害物質が放出されていることもあります。微量でも、塵も積もれば山となり、健康被害につながる恐れがあります。気密、断熱、換気は、セットで導入しましょう。

・窓を増やし過ぎない

窓は、採光がとれ、開放感が出るので、たくさん設けたいと考える方は多いと思います。しかし、窓には断熱材が入れられず、外気の影響を受けやすい部分です。必要以上に増やし過ぎると、気密性の観点からは、不利になります。また、窓の種類によっても気密性の違いがあります。もっともポピュラーな、横にスライドする『引き違い窓』は、すき間が多く、気密性は低めです。ハンドルを操作して開閉する窓は、『すべり出し窓』と呼ばれ、引き違い窓より気密性は高くなります。また、開閉が出来ない『FIX窓』が、もっとも気密性が高い窓です。採光のみ必要な箇所にはFIX窓を使うなど、組み合わせると良いでしょう。

・樹脂サッシを使う

樹脂サッシは、一般的なアルミサッシと比べて、熱を伝えにくいという特徴があります。樹脂サッシの断熱性は、アルミサッシの2倍以上と言われています。熱が伝わりにくいと、室内外の温度差の影響が小さくなり、結露が起きにくくなります。結露は、カビやダニの発生の原因にもなり、予防することで、快適な生活空間が叶います。また、気密性、断熱性の高い樹脂サッシには、同様に、性能の高いガラスを採用すると良いでしょう。ペアガラスやトリプルガラスなどがおすすめです。

・断熱材の種類にもこだわる

気密性を高くするには、断熱材の種類にもこだわり、よく検討することが大切です。断熱材でポピュラーなものに、グラスウールやロックウールがあります。どちらも繊維系の断熱材で、コストパフォーマンスが良く、住宅でもよく利用されています。しかし、手作業で詰め込むため、すき間ができやすく、高い施工技術が必要になります。施工不良によって、柱や壁との間にすき間ができてしまうと、断熱性能が下がったり、内部結露を起こしたりします。より気密性の高い断熱材には、現場で吹き付けて施工する、発砲ウレタンフォーム(硬質ウレタンフォーム)があります。吹付けタイプの断熱材は、吹付けてから膨らむため、壁や柱とすき間なく密着します。デメリットは、繊維系の断熱材よりコストが高いことです。費用と効果をよく検討して、選ぶようにしましょう。

まとめ

今回は、住宅の『気密性』について詳しく解説しました。気密性が高いとメリットが多く、住宅を快適な空間に保ちます。また、断熱性能や換気システムとセットで導入することで、効果が高まります。気密性を高めるには、グレードの高いサッシや窓ガラスの採用、丁寧な施工も必要になり、イニシャルコストは高めになりやすいでしょう。ランニングコストまでトータルで考え、導入を検討してはいかがでしょうか。