南欧の家、外観の特徴5つと南欧風インテリアにするコツを解説

『プロヴァンス』や『地中海』と聞くと、青い海や、温暖なヨーロッパのリゾート地を思い浮かべる人が多いと思います。地中海沿岸の国々は、南欧と呼ばれています。南欧の家は、太陽が似合う、愛らしく素朴なデザインで、日本でも人気です。今回は、南欧の暮らしとインテリアについてご紹介し、外観の特徴や、南欧風インテリアにするコツを解説します。

南欧の暮らしとインテリア

・南欧とは

ヨーロッパ南部にある、地中海沿岸の国や地域のことです。フランス南部やイタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどが含まれます。南欧の気候は、地中海性気候で、夏は高温で日差しが強く、カラッとしています。冬は温暖湿潤になり、過ごしやすくなります。小麦や大麦、オリーブやぶどう、柑橘類などの生産がさかんです。温暖な気候で、リゾート地としても人気が高く、とくに夏は、ヨーロッパ内のみならず、世界中からの観光客でにぎわいます。

・南欧の暮らし

夏は高温で、日差しも強烈です。日中の一番暑い時間は家で過ごす、という『シエスタ』の習慣があります。また、夏や冬に長いバカンスをとる人も多くいます。フランス南部のプロヴァンス地方には、多くの人が一度は聞いたことのある、モナコやニース、映画祭で有名なカンヌなどの都市があります。また、コートダジュールという海岸もあり、ヨーロッパの人々もバカンスで訪れる、人気のリゾート地です。日差しは強いものの、日陰に入ると涼しく過ごせるため、カフェのシェードの下や、ビーチでのんびり過ごす姿が見られます。

・南欧の家

家も気候に合わせ、快適に過ごせるような工夫がされています。多くの家の壁は、日差しを吸収しないために、厚みがあり、白や淡い色で塗られています。また、屋根には断熱性の高い瓦が使われています。また、南欧風の家と一口に言っても、南仏プロヴァンス風、スパニッシュ風、ギリシャ風、ポルトガル風など、細かく分けると、色々な種類があります。しかし、全てに共通するのは、太陽と青空が似合う家、という点です。愛らしい外観には、塗り壁や瓦、タイルやレンガが上手に使われています。

・南欧のインテリア

インテリアは、温かみがある、素朴なナチュラルテイストです。白や淡いベージュ、淡いイエローなどの壁に、無垢のフローリングや、タイルやレンガの床。木製のドアには小窓や装飾があり、出入り口にはアールを付けるなど、細部のデザインが繊細で素敵です。南欧の家は、アンティーク調の家具が似合う、柔らかな印象のインテリアが特徴です。

南欧の家、外観の特徴5つ

南仏プロヴァンス風やスパニッシュ風など、日本でも人気の南欧スタイルの家。外観の特徴5つを解説します。

・白い塗り壁

家の外観で特徴的なのは、白や淡いベージュ、淡いイエローなど、明るい色の塗り壁です。主に、漆喰(しっくい)という自然素材が使われています。漆喰は、消石灰を主原料としています。世界中で内外の壁に用いられている、耐久性の高い建築素材です。外壁に白などの明るい色が使われる理由は、強い日差しを反射させ、家の中を涼しく保つためです。白壁にオレンジの屋根の家は、南欧では多く見られます。また、ギリシャのミコノス島の白亜の街並みは有名です。カレンダーや雑誌などで一度は見たことがあるでしょう。

・赤茶やオレンジの瓦屋根

屋根は、赤茶やオレンジなど、暖色系の素焼きの瓦が特徴的です。素焼きの瓦は、粘土を固めて焼いたもので、優しい土の色です。屋根を明るい雰囲気にしています。瓦は、断熱性に優れていて、強い日差しを遮ってくれます。日本でも、西洋由来の洋瓦を屋根に用いることで、南欧テイストになります。洋瓦の形状は、S型、F型、M型と3種類あります。このうち、S型はスペイン式で、丸みや立体感があり、南欧テイストの家にぴったりです。洋瓦は耐久性や通気性も良いというメリットがあります。しかし、施工費が高い点や、日本で多く使われているスレート屋根よりも、2倍近い重量があるという点はデメリットです。新築の場合は、屋根の重量に耐え得る建物になるよう、設計の段階で考慮してもらいましょう。

・切妻屋根

切妻屋根(きりづまやね)も南欧住宅の特徴です。切妻屋根は屋根の形状の1つで、正面から見て、山型に見えるタイプです。雨や雪に強く、世界中の家で見られる、シンプルな形状です。三角形の壁の部分は妻壁と呼ばれます。南欧の家では、妻壁に、アイアンで家紋をかたどった飾りを付けることもあります。この飾りは妻飾りと呼ばれています。日本でも好きなデザインの妻飾りを付けると、より南欧風の家に近づきます。

・アイアンの格子や装飾

アイアン製の格子や装飾も、南欧デザインの特徴の1つです。門扉やドアの小窓、外壁の妻飾りなどに使われています。正式にはロートアイアンと呼ばれ、錬鉄(れんてつ)を意味します。ロートアイアンは、王朝時代、バロック、アールヌーボー、アールデコなど、時代によって変化し、ヨーロッパ文化のなかで発展しました。飾りとしての装飾美だけでなく、門扉や面格子として防犯性も高く、機能美も兼ね備えています。南欧スタイルの家では、外構やインテリアに、ぜひ取り入れたいアイテムです。

・テラコッタ

テラコッタは、素焼きの焼き物や、茶色がかったオレンジ色を意味する言葉です。イタリア語の『焼いた土』に由来しています。テラコッタは、素朴で、色むらのある独特の風合いが魅力です。南欧の家では、テラコッタを床材や、屋根瓦に使っています。しかし日本の風土では、本物のテラコッタを屋根に使うと、雨がしみ込んだり、苔が生えたりする恐れがあり、適していません。日本の住宅でテラコッタを取り入れるなら、テラスの床や、玄関ポーチやアプローチに使うのがおすすめです。玄関ポーチとは、ドアの前に広がる、庇の下のスペースです。また、アプローチは、門から玄関までの通路のことです。

南欧風インテリアにするコツ

最後に、インテリアや内装を南欧風にするコツを解説します。

・塗り壁風クロスもあり

内装でも、壁面に漆喰や珪藻土を使うことができます。無垢材のフローリングと合わせ、より風合いを楽しみたい方に人気です。しかし、施工費用が高くなることや、経年劣化により、ポロポロと落ちたり、ひび割れしたりといったデメリットもあります。デメリットが気になる場合は、塗り壁風クロスを使うと良いでしょう。触り心地などは本物と違いますが、雰囲気は十分に味わえます。

・内装にもアイアンを取り入れる

内装では、階段の手すりや、照明にロートアイアンを取り入れるのがおすすめです。ナチュラルなインテリアを引き締める、アクセントになります。曲線が美しいロートアイアンの、華奢で上品な佇まいが、南欧らしい、おしゃれな空間を演出してくれます。照明には、アイアンを使ったシャンデリア風のペンダントライトや、壁付けのブラケットライトなど、少しデコラティブで、アンティーク調なものが似合います。

・タイルやレンガを取り入れる

タイルやレンガを、インテリアに上手に取り入れましょう。ポルトガルやスペインで生産されるタイルは、『アズレージョ』と呼ばれ、5世紀に渡って作り続けられています。白地に青で描かれた模様がポピュラーで、ポルトガルでは、街中でアズレージョが装飾に使われています。南欧風インテリアでも、アズレージョをキッチンや洗面所の壁や、床に取り入れるのがおすすめです。また、よりシンプルなデザインを好む場合は、テラコッタタイルやレンガを取り入れましょう。テラコッタタイルは、滑りにくく、汚れが目立たないというメリットがあります。デメリットは、吸水性があり、水と一緒に汚れが染み込む場合もあることです。しかし、風合いを残しつつ、使いやすいように改良を施した、テラコッタ調タイルという製品があります。水回りで使う場合や、汚れが気になる方は、テラコッタ調タイルを使うと良いでしょう。

・アールをつける(アーチ型)

出入口などにアールをつけると、雰囲気がグッと南欧テイストになります。アーチ型は、ローマ時代から、宮殿などでも用いられてきました。アーチ型の垂れ壁は、柔らかい印象を与え、空間に広がりをつくってくれます。リビングやキッチンへの出入り口や、パントリー、ファミリークローゼットなど、ドアを取付けなくても、おしゃれに、緩やかに仕切ることができます。もともと、家には直線が多いので、白い壁にアールをつけるだけでも、インテリアのアクセントになります。また、玄関ドアをアーチ型にし、小窓やアイアンで装飾すれば、家に入る前からワクワク感があります。

まとめ

南欧の家は、地中海沿岸で暮らす人々を、強烈な日差しから守る役割を果してきました。外壁は、太陽を反射する白や淡い色で、屋根には、断熱性の高いテラコッタの瓦が使われています。また、外観や内装に、アイアンやタイルを装飾として上手に使っています。日本で南欧風の家を建てる場合は、日本の風土に合うようにアレンジして、上手に南欧テイストを取り入れましょう。