北欧の家、外観やインテリアを家づくりに取り入れるコツ

北欧といえば、IKEA、マリメッコ、ムーミンなど、多くのブランドやお店、キャラクターを思い浮かべることができます。どこか暖かみを感じる、シンプルでおしゃれなデザインが、日本でも多くの人に愛されています。家づくりでも、外観やインテリアに、北欧風のデザインを取り入れたい、という人も多いと思います。今回は北欧の家やインテリアについてご紹介し、家づくりに取り入れるコツを解説していきます。

北欧の基礎知識

幸福度が高い、と言われる北欧の国々。家だけでなく、あらゆる物について、『いいものを長く使う』という考えが根付いています。まずは、基礎知識や、北欧スタイル(スカンジナビアスタイル)について解説します。

・北欧の基礎知識

北欧と呼ばれる地域に、どのような国々があるかご存じですか。北欧には、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、アイスランドが含まれています。その中で、面積がもっとも大きいのは、スウェーデンです。日本の1.2倍程度になります。人口もスウェーデンがもっとも多いものの、日本の1/10程度で、東京23区と同程度の人数です。国土の53%が森林で、自然と共生しながら、広い国土でゆったりと暮せていることが分かります。

1人当たりのGDP(国内総生産)を見ると、北欧5カ国全てが、上位15位までに入っています。GDPは、国内で生み出された付加価値(儲け)のことで、その国の経済状況や、豊かさを表す指標とも言われています。北欧の人々は、森林や湖などの自然と共生しながらも、ITをはじめとした最先端の技術開発や、福祉の充実など、先進的な発想を持ち合わせています。

・北欧の気候

夏は快適で、一部曇り、冬はとても長くて寒く、降雪も多くてほぼ曇りです。気温はマイナス6°から22°くらいに変化しますが、27°を超えることはほとんどありません。一年を通して、曇りの日が多いのが特徴です。そのため、キャンドルや照明をうまく使い、おうち時間を楽しむ暮らし方が、生活に根付いています。

・北欧スタイル(スカンジナビアスタイル)とは

スカンジナビアスタイルは、白などを基調とした穏やかな配色に、照明や自然光を取り入れた、安らぎのあるスタイルです。スウェーデン、ノルウェー、デンマークのスカンジナビア3国を中心として広がりました。寒さが厳しく、日照時間が短いため、おうち時間がとても長く、家の暮らしやすさや、心地よさを大切にしています。家の外観やインテリアはシンプルで、機能美や曲線美を感じさせます。派手さやきらびやかさはありません。しかし、時の流れに色あせない、モダンなテイストが魅力です。自然を愛で、木のあたたかみを好む日本の生活や家にも、取り入れやすいデザインになっています。

北欧の家の特徴とは

次に、外観や性能、インテリアの特徴を紹介していきます。

・外観の特徴

●三角形の大屋根スタイル

伝統的な家の屋根は、急こう配の三角形が特徴の大屋根スタイル(切妻屋根)です。日本の豪雪地帯に昔からある、合掌造りにも似ています。この形状は、降り積もった雪を自然と落とし、雪の重みで家がつぶれないための工夫です。

●漆喰の壁

家の外観や内装には、漆喰や石材、無垢材といった、自然素材が多く使われています。漆喰は、石灰にのりや粘土などを混ぜた壁材のことで、耐用年数がとても長く、経年変化を楽しめます。漆喰の白い壁は、外観に使えば、耐久性があり、内装では、調湿性の良さや風合いの暖かさが活かされます。北欧では、室内がうす暗くなりがちなため、真っ白な漆喰の壁は、室内を明るくしてくれます。

●複層ガラスの窓や木製サッシ

窓やサッシにも、厳しい冬でも快適に暮らすためのアイディアが詰まっています。窓は、天井や壁の高い位置に配置され、自然光をたくさん採り入れる工夫がされています。複層ガラスをはめることで、防寒機能も保っています。また、木製サッシも特徴的です。木製サッシは、断熱性に優れ、結露しにくいのがメリットです。見た目もおしゃれで、日本でも人気が高まっています。

●壁面の配色

北欧の家の外観で印象的なのは、ツートンカラーの配色です。1階と2階で色を分けたり、屋根と壁面で色を分けたりします。上部に濃い色を使うと北欧らしくなります。また、伝統的な家は、屋根や壁面の色が『赤い』ことが特徴でした。赤い色の正体は、赤土の色素で出来ている、ベンガラという顔料です。主成分が鉄で、防湿性、耐久性、耐候性があります。赤い塗料を塗る事で、デザイン性だけでなく、家の性能もアップさせていました。

・性能やインテリアの特徴

●シンプルで機能的

無駄な装飾のない、シンプルな美しさと機能性のバランスが魅力です。家の機能性では、厳しい自然環境で培われた、断熱性能や換気性能が特に優れています。また、スウェーデンなどの都市部では、小さなアパートメントや集合住宅が多くを占めています。そのため、日本と同じように、効率の良い収納が求められています。しかし、家具や収納は、用途が決まっているからこそ、デザインやカラーにこだわっています。心を豊かにすることを忘れないのが、スカンジナビアスタイルです。

●暖かみがある

シンプルな中にも、どこか暖かみを感じさせてくれます。北欧には、エレガントな曲線や、柔らかな素材感を大切にした、家具の名作がたくさんあります。例えば、アルネ・ヤコブセンのセブンチェアや、ハンス J. ウェグナーのYチェアなどは、世界中で愛され続けている椅子です。とてもシンプルなのに、フォルムの愛らしさや、自然素材の暖かみ、そして使い心地の良さが魅力です。

●自然素材を生かす

北欧の家は、100年近く使われているものもあり、家も家具も、手入れをしながら長く使うことが当たり前になっています。家づくりでも、無垢木材や漆喰がよく使われ、優しい風合いと経年変化を楽しんで暮らしています。

●鮮やかな配色のファブリック

北欧には、マリメッコやフィンレイソンといった、日本でも人気のあるテキスタイルブランドがたくさんあります。自然や植物、四季の移り変わりをモチーフにしたデザインが多く、配色が鮮やかです。家の外観や内装はシンプルでも、ファブリックでは鮮やかな色や柄を取り入れ、生活を楽しむのがスカンジナビアスタイルです。

・設備の特徴

●暖炉・薪ストーブ

北欧では、多くの家に、暖炉や薪ストーブがあります。暖炉と薪ストーブの違いは、簡単に言うと、扉があるのが薪ストーブで、ないものが暖炉です。どちらも遠赤外線効果で、お部屋を隅々まで暖めてくれます。薪が燃えるパチパチという音や、炎の揺らぎとぬくもりから、安らぎや癒しも得ています。また、薪ストーブでは、ダッチオーブンなどを使い、美味しい料理も作れます。暖炉や薪ストーブは、寒冷地で暮らし、家族との時間を大切にする人々には、欠かせない設備になっています。

●サウナ

サウナは『蒸し風呂』という意味のフィンランド語です。サウナ発祥の地と言われているフィンランドでは、家にサウナがある家庭がたくさんあります。北欧では、サウナは家族で楽しむ場所になっています。フィンランドの伝統的な入浴方法は、ロウリュサウナと呼ばれています。フィンランド式とも呼ばれ、室内にストーブが置かれているのが特徴です。ロウリュとは、高熱のサウナストーンに水をかけて発生させる蒸気のことです。蒸気によって室内の湿度や体感温度が上がり、発汗を促します。近年、日本でも、ロウリュと似た入浴方法が人気です。タオルなどで、高温の蒸気を仰いで熱波を発生させる、熱波師の存在が話題になっています。

北欧スタイルを家づくりに取り入れる3つのコツ

ここまで、基礎知識や、外観やインテリア、設備の特徴をご紹介してきました。

最後に、家づくりに取り入れる3つのコツを解説します。

●外観の色を北欧風にする

外壁に、白、グレー、ベージュ、茶色など、ナチュラルカラーを選ぶと良いでしょう。1階と2階の色を分けるツートンにすると、より北欧らしさがでます。ツートンに抵抗がある場合は、外壁は1色にし、雨どいや窓枠にアクセントカラーを入れるのもおすすめです。また、本場では、木材やレンガ、石材なども外壁に使われます。しかし日本では、木目調やレンガ調のサイディング材を使うと、メンテナンスがラクで、取り入れやすいでしょう。

●明かりにこだわる

日照時間が短く、冬が長い北欧では、照明やキャンドルの明かりをとても大切にしています。照明器具は、天井からぶら下げるタイプの、ペンダントライトが主流です。たとえば、ルイスポールセン社のPH5を始め、たくさんの名作や、北欧風のライトが日本でも購入できます。ダイニングなどに、優しいフォルムのペンダントライトを取り入れてみると良いでしょう。インテリアのポイントにもなります。また、リビングや寝室に間接照明を使うと、キャンドルのような優しい明かりで、自然とリラックス感が得られるのでおすすめです。

●ファブリックや雑貨で北欧デザインを楽しむ 外観や家具ほど大げさではなく、気軽にスカンジナビアデザインを取り入れられるのは、ファブリックや雑貨です。自然を愛する風土が生んだデザインは、日本の住宅にも馴染みます。しかし、ちょっとした色使いが、『北欧』を感じさせてくれます。大胆な柄のファブリックも、クッションやカーテンなら、チャレンジしやすいでしょう。また北欧では、多くの家で、ポスターやアートパネル、ファブリックパネルなどを飾って楽しんでいます。家づくりでも、玄関やリビングなどに、パネルや雑貨を飾り、手軽にスカンジナビアスタイルを楽しむのはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、北欧の家の外観やインテリアなどの特徴についてご紹介し、家づくりに取り入れるコツを解説しました。デザインと機能性の両方を大切にし、明かりや配色にこだわるスカンジナビアスタイル。シンプルで暖かみがあり、その上洗練されています。自然を愛で、シンプルで機能性を重視する風土は、日本でも馴染みやすく、違和感がありません。おうち時間を楽しむ暮らし方は、日本の家づくりでも参考にできることが多いと思います。本格的に取り入れたい人は外観や内装を、少し興味があるという人は、まずは、家具やファブリック、雑貨などから北欧デザインを取り入れてみてください。