高断熱・高気密の家のメリットは?工法や義務化についても解説
今、住宅の性能として『高断熱・高気密』が注目されています。新築を建てるなら、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な家にしたいですよね。快適で省エネな家に必要なのは、断熱性や気密性です。2025年度以降には、すべての新築の建物に断熱性能などの省エネ基準が義務づけられます。今回は、高断熱・高気密とは何か、目安やどんなメリットがあるのかをご紹介し、工法と対策すべき箇所についても解説したいと思います。
高断熱・高気密とは
まずは言葉の意味からご紹介していきたいと思います。
・高断熱とは
夏の暑い外気は室内に伝えず、冬の室内の暖かさは外に逃がしにくくした、断熱性の高い状態のことです。家の壁や床に、外部からの影響を受けにくい建材(断熱材)を充填したり、外側から覆ったりして、室温が外気に左右されないようにします。
冷たい空気は下にたまり、暖かい空気は膨張して上がる性質があります。断熱性が低い場合、室内をいくら暖めたとしても、壁や窓によって空気が冷やされ、特に足元が寒くなってしまいます。
・高気密とは
できる限り家の隙間をなくし、家の中の空気と外気を交わらせないようにした気密性が高い状態のことです。
気密性が低い場合、暖かい空気は上部から逃げ、冷たい空気が隙間から侵入し、下に溜まってしまいます。高断熱と高気密は、セットで働くことで快適で省エネな住宅が叶います。
・基準はないって本当?!
本当です。実は、『高断熱』や『高気密』の明確な基準はありません。では、どのような住宅が『高断熱・高気密』と言えるのでしょうか。一般的には、国が定める省エネルギー基準を超えるレベルを満たしているかどうかが、ひとつの目安となっています。
高断熱・高気密の目安(省エネ基準や断熱性能等級)
次に、目安となっている、省エネ基準や指標について解説していきたいと思います。
・省エネ基準の義務化
日本の住宅の省エネルギー基準、断熱基準は、世界に比べてまだ劣っていると言われています。日本で初めて住宅に推奨される省エネ基準が制定されたのは1980年です。その後、変遷を重ね、1999年には『次世代省エネ基準』へと強化されました。
そして2022年6月13日に、改正建築物省エネ法が参議院本会議で可決・成立。これにより、2025年度以降、すべての新築の建物に断熱性能などの省エネ基準が義務づけられました。今後ますます高断熱・高気密の家が求められるようになるでしょう。
・断熱性能等級について
『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』のなかで規定された指標です。これまでは、前述の次世代省エネルギー基準をクリアすることが、最高ランクの『等級4』相当でした。しかし、もっと高いレベルを持つ家でも、等級4以上がなかったため、差別化が難しい状況がありました。そのような背景から、2022年4月に、『等級5』が新設されています。
等級は、『UA値』という数値で表されます。UA値とは、床・外壁・窓・屋根などを通じ、室内から外へ逃げる熱量を平均した値です。UA値が小さいほど、熱が逃げにくく、性能が高いといえます。UA値の基準は下記です。
等級5 UA値≦0.60〈2022年4月新設〉
等級4 UA値≦0.87
等級3 UA値≦1.54 等級2 UA値≦1.67
高断熱・高気密の家のメリット
続いて、どんなメリットがあり、一般的な家との違いは何か解説します。
・快適さが違う
一般的な家の場合、床や壁が外気の影響を受けやすくなります。窓などの開口部からも外の冷気や熱が入り、家に居ても夏は暑く、冬は寒いという状態になります。室内はエアコンが効きづらく、設定温度と体感に差が出てしまうこともあります。
一方、高断熱・高気密の家では、気温の影響を受けにくいため、一年中快適に過ごすことができます。エアコンで温度が保たれ、夏は涼しく、冬は暖かい生活が叶います。
・健康的に暮らせる
断熱性能によって健康にも影響が出るという研究結果があります。例えば下記のような効果が期待できると言われています。
●風邪をひきにくい
●体調不良が改善する
●ヒートショックが起きにくい
・家計に優しい
断熱性能が高いと、冷暖房効率が上がり、光熱費を削減できる効果もあります。一般的な家との冷暖房費を比較すると、3割程度の光熱費が抑えられ、家計に優しい家になります。
・地球環境にも優しい
高断熱・高気密住宅では、冷暖房効率が上がるため、消費する電力量が減ります。脱炭素化にも貢献でき、環境に優しくエコな暮らしが実現します。
断熱工法と対策すべき箇所
工法は主に3種類で、『内断熱工法』と『外断熱工法』、両方を合わせた『付加断熱工法』があります。それぞれの特徴をお話し、対策すべき箇所についても解説します。
・内断熱
充填工法とも呼ばれ、壁や柱の内側や間に断熱材を詰める(充填)する工法です。主にグラスウールやロックウールなどの繊維系や、現場発泡ウレタンなどが使用されます。
繊維系は施工がしやすく、多くの木造住宅で採用されているため、コストが安いことが魅力です。一方で、結露が発生しやすく、湿気対策が必要になります。現場発泡ウレタンは、費用は少し上がりますが、結露が起こりにくい素材です。
・外断熱
外張工法とも呼ばれ、住宅の柱や梁など、全体を外側から板(ボード)状の断熱材で覆う工法です。硬質ウレタンボードなどのプラスチック系が利用され、高い断熱性や気密性が実現出来きます。
建物内部に結露が発生しにくいという魅力がある一方、コストは高くなります。また、地震や強風などで外装材がゆるんだり、変形したりする恐れもあるのがデメリットです。
・付加断熱(併用工法)
近年、特に寒冷地では充填した上で外張りを行う、併用工法も見られるようになっています。また、断熱材は必ずしも1種類だけが採用されるとは限らず、天井・壁・床で使い分けているハウスメーカーもあります。
対策すべき箇所
最後に、新築を建てる際に対策すべき箇所についてみていきましょう。
● 壁
対策すべき箇所として、もっともイメージしやすいのが壁ではないでしょうか。壁には、前述の外断熱工法、内断熱工法、併用工法の3種類があります。
住宅には木造のほか、鉄筋コンクリート造や鉄骨造など、様々な構造があります。構造やお住まいの地域によって適した素材や工法が異なります。また、壁そのものよりも、窓の方が熱の出入りが多いため、窓の断熱も合わせて検討することが重要です。
● 床、基礎部分
床や基礎部分に施工する断熱材は、床下からの寒い空気の流入を抑えてくれる役割を果たします。気をつけるべきポイントは、壁と床の接合点や、柱の周りに隙間をつくらないように施工してもらうことです。
いくら厚い断熱材を使用していても、隙間があっては冷気が入ってきてしまいます。信頼のおけるハウスメーカーや施工会社を選ぶことがとても大切です。
● 天井、屋根
天井断熱は、天井の板の上に施工する方法です。一方、屋根断熱は屋根に施工する方法で、屋根で外気を遮断するので、天井裏やロフトなど、スペースの有効活用が可能です。デメリットは、天井への施工よりも費用が高い点です。工事費が1〜3割ほど高くなるでしょう。
● 窓ガラス
窓は、壁以上に熱の出入りが多い場所です。窓がたくさんあったり、サイズが大きかったりする家は、明るくて素敵です。しかし、対策をしないと、夏は暑く、冬は寒い家になってしまいます。
窓ガラスには、2枚のガラスを使ったペアガラス、3枚使っているトリプルガラスなどを採用しましょう。ガラスの間にある空気の層が、熱の出入りを抑えてくれます。
● サッシ
窓には、ガラスだけでなく、熱が伝わりにくいサッシを取り入れることも重要です。サッシの素材には、木、アルミ、樹脂などがあります。その中で、断熱性、気密性の両方優れているのは樹脂サッシです。
樹脂サッシは主に塩化ビニール樹脂でできています。塩化ビニール樹脂は、アルミに比べて熱伝導率が約1/1000と非常に低いのが特徴で、腐食しにくい点もメリットと言えます。 デメリットは、アルミサッシより値段が高く、強度面がやや劣っている点です。海外では、北ヨーロッパや北アメリカといった寒冷地を中心に普及していて、韓国やアメリカでは、半分以上の世帯で樹脂サッシが使われているそうです。日本でもこれからもっと樹脂サッシが普及していくでしょう。
まとめ
日本では、年々夏の暑さが厳しくなっています。地域によっては40度を越えるような日も。また、その一方で冬の寒さが厳しい地域もあります。そのような環境で、今注目されている『高断熱・高気密』の家。夏も涼しく、冬は暖かい、省エネでエコな、快適生活が叶います。断熱材は、目には見えない箇所に施工します。新築を建てる際、費用をかけるべきか迷うこともあるかもしれません。しかし、デザインと同じくらい性能も大切です。家づくりの際には、記事を参考にして頂き、よくご検討ください。
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