香りをレイヤードすると楽しみ方がどんどん広がります!香りのプロが居心地のいい部屋をつくる秘訣を伝授
私のサロンにいらっしゃるお客様へお部屋用のアロマ精油を調合してオリジナルの香りを作る際多い質問が、「家の中にいろんな香りがあったら混ざってしまって部屋が変な匂いにならないですか?」という心配です。
例えば、玄関の香りとリビングの香りが違うと廊下あたりで二種類の香りがぶつかって混ざってしまうのではないか・・・とか。アロマ精油の自然の香りとお香のくゆるものの相性は良いか・・・とか。フレグランス(芳香アイテムで用いられる香料)と天然の植物の香りは喧嘩しないか・・・とか。
確かに気になりますし、部屋が不快な匂いにならないか心配になりますよね? そこで私がいつも提案しているのが“自分らしい香りのレイヤード”を楽しむことです。自分が「なんだかいい香り」「気持ちいい香り」と思えればO K問題ありません。今回は、「香りのレイヤード」について詳しくお伝えいたします。
香りのレイヤードとは
段差をつけてカットするヘアスタイルをレイヤーカットと言い、服の重ね着をするファッションスタイルをレイヤードスタイルと言っています。レイヤードとは「積み重ねる」「段になる」「層をなす」意味をもっており、近頃は香りを楽しむ時にも使われる言葉にもなりました。香りをレイヤードするとは香りを重ねていくことであり、1+1、1+1+1と積み上げていくと香りが幾重にも重なり自分だけのお気に入りの香り、またあなたの家だけのオリジナルの香りを作ることが出来るのです。考えただけでもワクワクしてきませんか?そうすると、これとこれを重ねたらどんな匂いになるんだろう?という探究心も芽生えてきます。
どんなものでも構いません。今あなたの部屋にある芳香アイテムを集めて、実際に左右の手にそれぞれ持って鼻の周りでフワフワと動かしてみてください。どうですか? レイヤードされて香りがより複雑化して奥深さを感じるのではないでしょうか?
香りをレイヤードする楽しさについて
部屋にどんな芳香アイテムを備え付けるのか、またアロマテラピーだとどのようなタイプのディフューザーを使用するかによっても部屋での香りの広がり方が違ってくるので一概には言えませんが、まずあなたが好きな香りを選んでいるのであれば、そこに存在する香り同士が喧嘩をすることはないでしょう。
アロマテラピーでは薬理効果の面で、精油のシナジー効果とクエンチング効果という2種類の作用が知られています。これは精油を単体で使うのではなく、ブレンドする事によって得られる効果で、前者は精油の成分同士がお互いに作用を高め合う相乗効果を発揮し、より効果的に。後者は強い刺激や毒性のある成分を抑えて和らげるよう働くため、刺激の強い精油も安心して使用できるというものです。ですから、私は、サロンでも講習会でもアロマ精油を使用する時は、必ずブレンドすることをお勧めしています。
さて、話を戻しますが、芳香アイテムも同様にポジティブなシナジーを生み出すことができると実感しています。複数のアイテムをレイヤードする事で徐々に香りの攪拌が起こりこれまでにない新しいものが出来上がります。あなたの嗅覚が新たにミックスされた個性ある香りを「心地よい香り」だと受け入れることが出来たら、部屋で過ごす時間もきっと変わってくるのではないでしょうか?
玄関のドアをあけた瞬間に感じる香りから、リビング、個室、トイレ、脱衣所それぞれの部屋にある香りが、シナジーを与え家の中で移動すると少しずつ香りがレイヤードされていくのを感じるはずです。
ちなみに我が家では玄関は噴霧式のディフューザーを使って温かみのある柑橘系のアロマ精油を広げ、リビングは加湿器でウッディ系のアロマ精油を使っています。トイレはスパイス系のポプリ、脱衣場はフィグ(イチジク)のスティック型ディフューザーと様々ですが、各部屋で香りがレイヤードされ、我が家だけのオリジナルな香り空間に仕上がっています。 それぞれの場所でなんとも言えない幸せな気持ちになれるので、つい香りを吸い込みたくなって深呼吸をしてしまいます。
レイヤードを楽しむ際、相性のよい香りの組み合わせ
柔軟剤のCMで香りをブレンドして自分だけの香りを作る楽しさを伝えるものもを見たことがあります。神ブレンドが出来上がったらテンションも上がりますね。自分の好きな香りの洋服に袖を通す時にとろけるような気持ちになったり、自分だけを包み込む安心感があったりするものです。ですが、柔軟剤や芳香剤など、合成香料で作られたものの中には強すぎる香りが苦手な人も少なくありません。頭が痛くなったり、気分が悪くなるようなものは極力部屋から取り除いていきましょう。
香りのレイヤードを楽しむためには、まず心地よいと思う香りをチョイスすることです。柑橘系のものは基本的にはどんな香りとも相性が良いので、間違いがないでしょう。
また前回のコラムでお伝えした「香りの分類 7つの系統」を参考にしていただけるとわかりやすいかと思います。
https://vacances2020.biz/column/1197/
ムスク系やエキゾチック系などの個性的な香りは部屋に設置する前に、一度左右の手にそれぞれ持ち、鼻の周りでフワフワ動かして心地よいと感じるかどうか試してみてください。
香りと記憶
香りは記憶とも深く結びついています。ここで嗅覚と脳のつながりを紐解いてみましょう。人間の持つ五感の中で「嗅覚」だけが本能や感情・記憶を司る大脳辺縁系にダイレクトに伝わります。他の「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」は知的活動を司る大脳新皮質にまず伝わりその後、大脳辺縁系へとアクセスします。そのため、香りは一瞬にして本能や感情を揺さぶったり、記憶に働きかける力が強いと言われています。
例えば、懐かしい音楽が流れてきました。学生時代大好きだった人がよく聞いていた曲という記憶が彼の思い出と共に甦る経験あると思います。では、街でふとすれ違った人から、大好きだった人と同じ香りが漂ってきました。一瞬にして彼の記憶がより明確に、その時の抱いていた感情やビジョンまでも鮮明にフラッシュバックするのです。「プルースト現象」と言われるものですが、何にも惑わされない感覚、これが嗅覚のすごいところなのです。
このような脳と嗅覚の関係性を知ると、感情をコントロールしたり、記憶にインプットするのに香りは役立つのです。
ちなみに、私は、我が家の玄関のドアをあけた瞬間感じる香りで、毎日のように心が落ち着き、幸せな気持ちになります。飽きもせず毎度毎度そんな気持ちになるなんて不思議でしょ? 「幸せな我が家の香り」だと脳にインプットされれば、自宅が幸せに満たされたパワースポットだと自動的に身体が反応するでしょう。
まとめ
今回は香りのレイヤードについてお伝えしましたが、あなたの家や部屋の香りもアロマ精油だけでなく、芳香アイテムとも重ねてみても意外性があり、新鮮な感覚をもたらしてくれるでしょう。ポジティブな感情に導いてくれるよう部屋の香り環境を自分なりに工夫して作ってみるのも楽しいのではないでしょうか?
自分が心地よいものや好きなものに囲まれて暮らすことは心の豊さにも繋がりますね。 部屋での香りのレイヤードだけではなく、お手持ちの香水でも、違う種類のものを重ねづけすることで自分だけのオリジナルの香りに仕上げることもできますので、試してみてください。
プロフィール
【荒石由紀恵】
中央大学を卒業後、山口放送に入社し、局アナウンサーとして勤務する。
T V番組内でアロマテラピーを取材したのをきっかけに学び始める。退社後、アロマが盛んなオーストラリアへ留学。生活の中で身近に使われるアロマに触れその魅力にはまり、帰国後に認定資格を取得する。1999年よりアロマ講師として活動を開始し2004年には、「心と身体の真の癒し」をコンセプトにした専門店「AROMADROPS」をオープン。介護施設でのアロマケア、クリニックでの産後ケアにも携わりセラピストとしても活動している。アロマテラピーの可能性を広げるため多方面で香りと他業種のコラボレーションを仕掛けている。
◇アロマドロップス http://aromadrops.net/