ホームエレベーターの種類とサイズ、設置する際の注意点3つ
ホームエレベーターは、一戸建ての間取りで2階リビングを選んだり、3階建てにしたりする場合によく検討される設備です。あれば便利だと思うものの、本当に必要か迷う人も多いと思います。今回は、一戸建てへのホームエレベーター導入のメリットをご紹介し、種類やサイズ、設置する際の注意点についても解説します。
一戸建てへのホームエレベーター導入のメリット
まず、ホームエレベーターとはなにか、導入メリットにはどんなことがあるのか解説します。
・ホームエレベーターとは
住宅内を昇降するエレベーターで、定員が3名以下、床面積は1.3㎡以下のものをいいます。人や荷物を乗せる個室は『かご』と呼ばれています。電源は、エアコンやIHクッキングヒーターなどにも使われる単相3線式200Vがあれば稼働できます。木造住宅にも設置が可能で、建物構造は選びません。また、サイズの小さいエレベーターでも、学校や施設などに設置されるものは『小型エレベーター』と呼ばれて区別されます。内装材や定期検査などが、ホームエレベーターよりも厳しく規定されています。
・ホームエレベーター導入のメリット
一戸建て住宅への導入のメリットには次のようなことが挙げられます。
●重い荷物がラクに運べる
2階や3階に重い荷物を持って行きたいとき、ホームエレベーターがあればラクに運べます。例えば、リビングが2階にある間取りでは、買い物の荷物を2階まで運ばなければなりません。とくに飲み物やお米など、重い荷物を持って階段を上り下りするのは大変です。また、洗濯物や布団を干す場合など、重いものを運ぶ機会は日常のなかにたくさんあります。ホームエレベーターがあれば、重い荷物もラクに運べて、家事の効率をアップできます。
●老後の不安が軽減できる
ホームエレベーターがあれば、足腰が弱くなるかもしれないという老後の不安が軽減できます。今は階段の上り下りが気にならない年齢でも、将来、自分や家族にとって辛く感じる日が来るかもしれません。高齢になると、階段で転倒してしまう恐れもあります。また、車いすを使うようになっても、ホームエレベーターがあれば、安心して上下階の移動ができます。
●小さいお子さんやペットの移動にも便利
小さいお子さんや階段が苦手なペットにとっても、エレベーターは安全で便利な設備です。とくに犬にとっては、階段の上り下りが関節や腰の負担になってしまう場合があります。また、3階建てや4階建ての場合、お子さんを抱っこしたり、手をつないだりして階段を上り下りするのは、とても大変で時間もかかります。ホームエレベーターがあれば、お子さんが2人いても、一度でラクに上下移動ができます。
一戸建て用ホームエレベーターの種類とサイズ
一戸建て用のホームエレベーターは、駆動方法や何人乗りかなどによっていくつかのタイプに分かれています。どのような種類やサイズがあるのか解説します。
・ホームエレベーターの駆動方式
ロープ式と油圧式の2種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。
●ロープ式
かごをワイヤーロープで吊り上げ、ドラムで巻き取ることによって昇降させます。最大昇降工程は10~13mと長く、停止階は5カ所までとなります。3階建て以上の建物には、ロープ式しか採用できない場合もあります。省エネや低騒音、油のニオイが無いことなどもメリットです。イニシャルコストも油圧式より少し安くなります。ロープ式エレベーターは、以前は建物上部に機械室が必要でした。しかし、現在は機械室が不要なタイプが開発され、一戸建てではロープ式が主流になっています。
●油圧式
電動ポンプで油圧ジャッキを働かせて、圧力によってかごを昇降させます。ふんわりとした乗り心地の良さが魅力です。しかし、最大昇降行程は7m以下、停止階は3カ所までとなるため、導入できるのは3階建て以下の住宅に限られます。油圧式エレベーターは、さらに『直接式』、『間接式』の2つに分類されます。直接式は、かごに直結している油圧ジャッキが、直接かごを押し上げて昇降させます。シンプルな構造で昇降路スペースをコンパクトにできます。間接式は、油圧ジャッキが滑車を動かし、間接的にかごを昇降させます。一戸建てのエレベーターには、『直接式』が使われることが多いでしょう。
・一戸建て用ホームエレベーターのサイズ
一戸建て用のホームエレベーターには、1人~3人用までの種類があります。一般的には2人用と3人用の製品が多く、さらにコンパクトなタイプとして、ゆとりがある1人用または2人用というサイズを設けている場合があります。エレベータールームの形状は正方形または長方形です。用途や間取りによって、サイズや形状を選ぶことができます。また、エレベーターの出入りの方法では、製品によって一方向出口か二方向出口かを選択できます。
●1人用
ルーム内サイズは、幅60~75cm×奥行き55~65cm程度で、耐荷重は約130㎏です。体重によっては2人で乗ることも可能です。ただし、車いすで乗ることはできません。
●2人用
ルーム内サイズは、幅60~75cm×奥行き90~110cm程度で、耐荷重は約150㎏です。横長サイズでは、幅約110cm×奥行き約60cmの製品などもあり、間口が広くとれます。車いすは、サイズによっては乗ることができます。
●3人用
ルーム内サイズは、幅85~100cm×奥行き110~150cm程度で、耐荷重は約200㎏です。車いすでも乗れるサイズになります。介助者が同乗する場合は、なるべく大きい方が良いでしょう。なかには、電動車いすやティルトリクライニング車いすが乗れるサイズの製品もあります。
一戸建てにホームエレベーターを設置する際の注意点
最後に、一戸建てへのホームエレベーター設置にあたって、知っておくべき注意点を3つ解説します。
・階段も必要
一戸建てにホームエレベーターを設置しても、階段は必要です。日常ではホームエレベーターで他のフロアに移動できても、災害時の移動には階段が必要になります。建築基準法では、3階建て以上の建物への直通階段の設置は義務付けているものの、2階建て住宅への階段の設置については定めがありません。しかし、ホームエレベーターの製品カタログなどにも、災害時には使用しないように書かれています。また、停電時も利用できないため、階段は必ず設けるようにして下さい。日常的な使い方としても、例えば、上がる時はエレベーターを使い、降りるときは階段を使うなど、家族が効率的に動けるように使い分けると良いでしょう。
・稼働時の音に注意
ホームエレベーターは、稼働時に音が出ます。音の大きさは50デシベル程度で、目安としては、静かな事務所やエアコンの室外機くらいの音です。洗濯機やトイレの洗浄音より小さい程度ですが、音に敏感な方は、寝室近くへの設置は避けるようにして下さい。せっかく一戸建てに便利なホームエレベーターを設置しても、音に悩まされてストレスになると後悔につながります。家族みんなが快適に暮らせるように、音にも配慮して間取りを検討することが大切です。
・定期的な保守点検が必要
ホームエレベーターの所有者は、建築基準法により、定期的な保守点検の実施と点検記録の3年以上の保管が義務付けられています。また、修理や改造をした場合や長期に渡って使用しない場合、廃止する場合などは、所管行政庁への届出が必要になります。点検の内容は、機器の性能チェック、調整、給油、清掃などです。小型エレベーターの場合は、年1回の法定検査報告が求められますが、ホームエレベーターでは不要です。しかし、絶対に故障しないというわけではありません。安全に利用できるよう定期的なメンテナンスを実施し、いつでも快適に使用できるように維持して下さい。
まとめ
今回は、ホームエレベーターについて解説しました。住宅用のエレベーターで、3人用までのサイズがあり、構造を問わず設置できます。一戸建てへの導入メリットには、上下階の移動や重い荷物の運搬がラクにできたり、足腰が弱くなる老後の不安が軽減できたりといったことがあります。ペットや小さいお子さんの移動にも便利です。また、設置の際に知っておくべき注意点としては、一戸建てには階段も必要であること、音に配慮して間取りを決めた方が良いこと、定期的な保守点検が必要になることの3つがあります。ホームエレベーターは、新築時の導入費用や設置スペースの確保、メンテナンスの手間や費用などもかかるので、よく検討して導入して下さい。