暖炉と薪ストーブはどう違う?メリット・デメリットや注意点
暖炉や薪ストーブのある家に憧れる人は多いと思います。寒い季節でも、家族が自然と集まり、温もりに包まれて過ごせたら素敵ですよね。しかし、暖炉と薪ストーブってどんな魅力があるの?なにが違うの?など、分からないことが多いのではないでしょうか。今回は、暖炉と薪ストーブを導入するメリット・デメリットをご紹介し、特徴や違い、注意点についても解説します。
暖炉や薪ストーブを導入するメリット・デメリット
昨今、北欧デザインや暮らしへの人気が高まり、日本の住宅でも、暖炉や薪ストーブへの関心が高まっています。まずは、暖炉や薪ストーブのメリット・デメリットを解説します。
・メリット
●癒しになる
どちらも、薪を燃料とする暖房器具です。ひなたぼっこをしているような、じんわりとした暖かさに、体だけでなく心も癒されます。炎のゆらぎには、リラックス効果があると言われています。キャンプやアウトドアでたき火をしなくても、暖炉や薪ストーブがあれば、手軽にリラックスや癒し効果を得られます。いつの間にか家族が自然と集まってくる、団らんの場所になるでしょう。
●おしゃれ
おしゃれで暖かい雰囲気が魅力です。外国の絵本に出てくるような、暖炉や薪ストーブのある家に憧れる人も多いでしょう。暖炉は、レンガや石で出来ているため、重厚感があります。しかし、壁の中に埋め込まれていることで、邪魔にならず、すっきりと収まります。薪ストーブは、北欧デザインのインテリアにもぴったりな、レトロなルックスが人気です。
●料理にも使える
暖房以外にも、料理に活用できることはメリットです。暖炉では、炉内にクッキングスタンドを置いて直火料理ができます。ダッチオーブンで煮込み料理を作ったり、ピザを焼いたり、マシュマロを炙ってデザートにしたり、たき火を囲むようにワクワクします。薪ストーブでは、ストーブトップを使った煮込み料理と、炉内を使ったオーブン料理の両方が楽しめます。シチューやカレーをコトコト煮込んだり、直火でローストチキンを焼いたり、ピザやフォカッチャを焼くのもおすすめです。しかし、炉内での調理は火加減の調節が難しく、温度管理が必須になります。また、炉内が狭いと使える調理器具も限られます。初心者さんは、ストーブトップを使った料理から始めると良いでしょう。
●停電時や災害時にも利用できる
停電時や災害時にも利用できるというメリットもあります。標準的なタイプは薪を燃料とするため、ガスも電気も使いません。日常的にも光熱費を抑えられ、エコで経済的です。停電時や災害時には、ライフラインが止ってしまうと、寒い季節には暖をとることができません。しかし、暖炉や薪ストーブがあれば、部屋を暖めたり、調理したりできるため、安心感があります。
・デメリット
●すぐに暖まらない
どちらも薪に着火してから部屋が暖まるまで、1~2時間近くかかってしまいます。すぐに部屋を暖めたい場合には、他の暖房器具を併用しなければなりません。また、1台だけで暖房を賄うためには、暖炉より燃焼効率が良い薪ストーブでも、高気密住宅でなければ難しいでしょう。
●設置や維持にコストがかかる
暖炉の設置には、タイプにもよりますが、本体と設置工事を合わせて300万円程度のコストがかかると言われています。薪ストーブも半分程度の費用になるようです。また、燃料になる薪や木材を自力で集められない場合は、購入して切らさないようにしなければなりません。設置だけでなく、維持にもコストや手間がかかることは理解しておきましょう。
●煙突内の掃除やメンテナンスが必要
煙突にはススが付いてしまい、そのままにしておくと、黒煙や火災の原因になってしまいます。そのため、煙突内は定期的な掃除やメンテナンスが必要です。煙突は高いところにあるため、自分たちで行うことは難しいでしょう。専門の業者に依頼しなければならず、手間も費用もかかってしまいます。最低でも年に一度、春から秋のオフシーズンに行うことをおすすめします。
暖炉と薪ストーブの違いとは?
次は、それぞれの特徴や違いをご紹介します。
・暖炉とは
レンガや石などで作られた、建物と一体になっている暖房器具です。扉がないものが多く、薪や木材を燃やして、たき火のように直接的に周囲を暖めます。炎のゆらめきやパチパチとはぜる音、薪が燃えるニオイなども感じられ、五感で楽しむことができます。暖炉の周りのおしゃれな装飾は、マントルピースと呼ばれ、飾り棚としても活用されます。暖炉には煙突が必要で、煙は壁の中を通って外へ排出されます。また、ガス式、電気式、バイオエタノール式など、様々なタイプがあり、なかには、扉付きや、煙突を設けないタイプ、据え置きタイプなどの進化型も販売されています。近隣との距離や法令、予算などに合わせて選ぶと良いでしょう。
・薪ストーブとは
薪ストーブは、ガラスの扉の付いた燃焼炉で薪を燃やし、室内全体を暖める暖房器具です。暖炉より熱効率が高いことは大きな魅力でしょう。煙突の付いた箱型で、建物から独立している据え置き式です。薪ストーブの煙突は、一部が室内に露出することが特徴的で、インテリアのアクセントになります。素材は、鋳物や鋼板製が一般的ですが、近年では、天然石などを使用したタイプも販売されています。設置の際は、壁や床を守るために、炉台の上に置きます。また、薪ストーブの熱放射の方法は、輻射式と対流式の2種類です。輻射式は定番のタイプで、薪ストーブ全体を暖めて熱を蓄え、自然放熱で部屋を暖めます。一方、対流式は、本体を二重構造にして空気層を作り、暖められた空気をゆっくりと放出します。対流式は、本体がそれほど高温にならないため、壁や家具に近づけられるメリットがある一方、天板での料理は難しいでしょう。
・暖炉と薪ストーブの違い
それぞれの違いを分かりやすくまとめると、次のようになります。
●建物と一体か、据え置きか
暖炉:一体
薪ストーブ:据え置き
●主な材質
暖炉:レンガや石
薪ストーブ:鋳物や鋼板
●扉があるか、ないか
暖炉:扉なしが多い
薪ストーブ:扉あり
●煙突の形状
暖炉:壁の中を通って外へ
薪ストーブ:室内から壁に入り、外壁または屋根から外へ
●暖められる範囲
暖炉:周辺
薪ストーブ:部屋全体
暖炉や薪ストーブ、導入にあたっての注意点3つ
最後に、導入にあたって、とくに注意が必要な点を3つ解説します。
・火災やヤケドに注意
火を使うため、やはり火災やヤケドには注意が必要です。暖炉や薪ストーブの設置に関わる法令には、建築基準法や消防法、火災予防条例があります。法令上は、キッチンのコンロと同様の扱いになるため、天井や周囲には不燃性の内装材を使うなどの制限があります。薪ストーブには扉がある分、小さいお子さんが直火に触れる危険は軽減できます。しかし、本体は熱くなるため、触れるとヤケドしてしまう恐れがあります。また、近くにものを置いたり、煙突のメンテナンスを怠ってススが溜まったりすると、火災の原因になります。火災やヤケドには十分注意して、ゆっくりと火を眺められる暮らしを楽しんで下さい。
・ご近所への配慮
使用の際は、ご近所への配慮も忘れてはいけません。煙突から出る煙には、ニオイや灰が混じっています。煙は、薪が十分燃えていない時に発生します。湿った薪を燃やしたり、薪ストーブで空気を絞り過ぎたりによって不完全燃焼が起こり、煙がモクモクと出てしまうことがあります。薪は、しっかり乾燥したものを使い、新聞紙や廃材など、薪以外のものは燃やさないようにしましょう。近隣と距離が近い場合には、設計時に煙突の高さや設置位置をよく検討したり、使うときには、洗濯物を干している時間帯を避けたりといった配慮も必要になります。
・薪の保管場所
薪の保管場所は、どこでも良いわけではありません。例えば、ジメジメした場所に積み上げてしまうと、薪が湿って不完全燃焼の原因になるだけでなく、シロアリなどの害虫を誘引してしまう恐れがあります。また、天井が高かったり、部屋が広かったりという場合、部屋を暖めるためには薪が大量に必要です。保管場所は、乾燥に適した、広さに余裕のある場所を選ぶようにして下さい。
まとめ
今回は、暖炉と薪ストーブを導入するメリット・デメリットをご紹介し、特徴や違い、注意点についても解説しました。両方とも薪を使う暖房器具という点は同じです。導入するメリットは、癒し効果が期待できることや、おしゃれで調理にも使えることなどです。一方デメリットは、設置や維持にコストがかかること、掃除やメンテナンスが必要なことなどが挙げられます。また、それぞれの違いは、建物と一体か独立か、扉があるかないか、暖められる範囲がどこまでかなどの点です。導入にあたっては、火災やヤケドに注意することはもちろんのこと、ご近所への配慮や、燃料になる薪の保管についても気を付けるようにして下さい。忙しい毎日のなかでも、ゆらめく炎に癒され、心も体も温めてみてはいかがでしょうか。