回遊動線ってなに?メリット・デメリットと人気の間取り4選

注文住宅に、回遊動線を取り入れるプランが増えています。とくに、家事をラクにしたいという人に人気です。回遊できる間取りでは、家中をスムーズに移動でき、時短になります。今回は、回遊動線とは何かをご説明し、メリット・デメリットと間取り事例、後悔しないための注意点についても解説します。

回遊動線ってなに?メリット・デメリット

そもそも、回遊動線とは何でしょうか。言葉の意味と、メリット・デメリットについても詳しく解説します。

・回遊動線ってなに?

行き止まりがなく、フロア内をぐるりと回れる経路のことです。一般的には、お部屋や廊下の奥まで行ったら、突き当りで引き返す間取りが多いでしょう。しかし、回遊動線を取り入れた間取りは、2方向から行き来できるため、家事や生活で歩く距離を短くできます。また、来客と家族の通路を分けたり、出かけるときと帰宅時の経路を変えたりが可能です。

・回遊動線のメリットとは

まず、メリットから見ていきましょう。

●近道できて時短になる

目的の場所まで近道できると、時短になります。朝夕の忙しい時間にもスムーズに移動でき、距離も時間も短縮されます。家族の人数が多い場合でも、身支度の際に、行ったり来たりで渋滞してしまうことを減らせます。

●家事効率がアップする

回遊動線を取り入れた間取りでは、家事効率がアップします。家事を同時にいくつも行うという人は多いのではないでしょうか。例えば、料理をしながらお風呂を入れる、食器を洗いながら洗濯も回す、お子さんの宿題を見ながら掃除機をかけるなど、マルチタスクをこなす人にとって、効率アップの手助けになります。

●来客時も気を遣わずに済む

来客用と、家族用の通路を分けておけば、来客時もお互いに余計な気を遣わずに済みます。例えば、家族用は、玄関を入って土間やシューズクロークを通り、洗面所や脱衣所に直行できるようにしておけば、部活や外遊びで汚れて帰宅した際にも、リビングを通過せずに済みます。また、来客時にトイレを使ったり、洗面所やお風呂に入ったりしたい場合も、我慢の必要がありません。

●家の中が広く感じる

行き止まりのない回遊動線は、奥行きのある間取りになり、家の中が広く感じられます。朝、家族が出勤や登校の準備で忙しい時間でも、渋滞がおきにくく、スムーズに動けるでしょう。

・回遊動線のデメリットとは

メリットの多い回遊動線ですが、どんなデメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

●お部屋や収納が狭くなりやすい

通路を確保したり、出入口を2ヵ所設けたりすることで、お部屋や収納に当てられる面積が減ってしまうことはデメリットです。例えば、アイランドキッチンは、両側から出入りできるため、回遊動線の間取りでよく採用されています。出入りしやすく、複数人で料理を楽しむにもぴったりです。しかし、片側から出入りするキッチンなら、奥に食器棚や収納を置くことも可能です。敷地面積に余裕がない場合は、動線と収納スペース、どちらを優先すべきか、選ばなければならない場合もあるでしょう。

●家具を置けるスペースが減る

回遊するために、お部屋やクローゼットに出入口を2ヵ所以上設けると、壁の面積が減ります。壁の面積が少なくなると、家具を置けるスペースが減ってしまいます。例えば、クローゼットをウォークスルーにした場合、両面に洋服や雑貨をめいっぱい収納したくなるでしょう。しかし、鏡の位置を決めておかないと、後から置く場所がなくて困る場合もあります。

●プライバシー性が低くなりやすい

回遊動線は動きやすい反面、動線上にある部屋のプライバシー性は、低くなりやすいというデメリットもあります。リビングが動線上にある間取りの場合、家具の配置によっては、人の出入りが多くて落ち着かなかったり、ストレスに感じたりという場合もあるでしょう。また、浴室やワークスペース、寝室などが自由に行き来できる間取りでは、プライバシーが確保できるよう、必要な時は鍵をかけられるようにするなどの工夫が必要です。

回遊動線を取り入れた人気の間取り事例4選

次は、人気の間取り事例を4つご紹介します。

・キッチンを中心とした回遊動線

家事のしやすさが人気の間取りです。キッチンからパントリーや洗面所、浴室などにアクセスしやすい配置になっています。洗面脱衣所と物干しスペース、ランドリールーム、クローゼットなどを隣接させると、さらに時短になります。洗濯機をまわし、干して、仕舞う、という一連の流れが、大きな移動をせずに完結できるので、ほかの家事との同時進行がしやすくなります。

・リビングを中心とした回遊動線

出かけるときや帰宅時に、スムーズに移動できる間取りです。玄関から洗面所や浴室への動線と、リビングへの動線の2通りがあります。帰宅時は洗面所や浴室に直行できるため、花粉や雑菌を室内に持ち込みにくくなり、リビングを清潔に保てます。また、出かけるときは、リビングから玄関にすぐ出られることで、スムーズに出発できます。

・玄関を中心とした回遊動線

ガレージから玄関を介して、土間やインナーテラス、シューズクロークやパントリーなどを回遊できる間取りです。外と中がゆるやかに繋がり、アウトドアグッズやスポーツ用品、ベビーカーなどの出し入れがラクにできます。また、荷物の運搬もしやすく、買って来た食材や、宅配で届いた重い飲料などをすぐに片付けられます。近年、感染対策として玄関に手洗いを設置する人も増えています。土間でDIYをしたり、自転車の手入れをしたりする際にも役立ちます。

・クローゼットを中心とした回遊動線

通り抜けられるウォークスルークローゼットを中心として、部屋を行き来できるようにした回遊動線もあります。通路をクローゼットとしても利用することで、省スペースが図れます。また、動線上にクローゼットがあることで、家事の効率もアップします。しかし、家族が部屋を自由に行き来することで、プライバシーの確保は難しくなります。年齢に合わせ、扉に鍵を付けるなどの配慮が必要になります。

回遊動線で後悔しないための注意点

最後に、建築後に後悔しないための注意点を解説します。

・収納や家具のスペースは確保しておく

フロアを回遊できることで家事がラクになる反面、収納が足りなかったり、家具が置けなかったりすると、かえって使いづらい間取りになってしまいます。家族それぞれが必要な収納量や置きたい家具などは、あらかじめ設計士さんに伝え、スペースを確保して下さい。広さに余裕がないケースでは、動線を優先すべきか、収納や居室スペースに使うべきか、生活をイメージして選択しましょう。回遊動線は、誰にでも、どんな家にでも合うわけではありません。家の広さや家族の人数、ライフスタイルに合った間取りを選ぶことが大切です。

・通路幅は余裕をもった広さにする

せっかく回遊できるようにしても、通路が狭くて通りにくいと、後悔の原因になります。限られた敷地面積の場合、収納や居室スペースをできるだけ確保するために、通路は最低限の幅にしたいと考えてしまいがちです。しかし、スムーズにすれ違うためには、80cm程度は必要になります。また、将来のために、車いすでも通れるようにしておくなら、最低でも85~90cmは確保しておきましょう。狭い通路になってしまうなら、無理に回遊させない方が良い場合もあります。

・家事や生活のしやすさを第一に考える

回遊動線を目的として間取りを決めてしまうと、後悔につながります。家事や生活のしやすさを第一に考え、その結果、利便性が高いという場合に採用しましょう。例えば、キッチンから脱衣所に直接アクセスできると、料理の合間に洗濯をしたいという人にとっては便利です。しかし、洗濯は夜間にするなど、同時進行しない人にとっては、なくても良い動線だと言えます。通路より、壁面収納を作る方が利便性も高くなります。自分たちのライフスタイルに合う間取りを選ぶことが大切です。

まとめ

今回は、回遊動線とは何かをご説明し、メリット・デメリットと間取り事例、後悔しないための注意点についても解説しました。注文住宅に取り入れるメリットは、家事や身支度が時短になったり、来客動線と分けることで気を遣わずに済んだり、家が広く感じたりなどがあります。デメリットは、面積に余裕がないと、収納や居室スペースを圧迫したり、プライバシーの確保が難しかったりすることです。間取りを検討する際は、回遊させることを目的とせず、ライフスタイルに合うかよく検討して取り入れて下さい。収納量や家具の置き場をしっかり確保し、生活のしやすさを重視することが大切です。